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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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ghostbusters_3

 月宮殿での激戦から一夜明けた五月四日。

 午前中に改めて忠江の家を訪ね、確かにその存在を確認してから蒼天はショッピングモール『ヒラルダ』に向かった。

 待ち合わせの時間よりは十分ほど早かったが、既に龍煇丸はそこにいた。今は戦闘中とは違い、黒いロングヘアになっている。服装も赤いクラシックワンピースだった。当然、眼帯もしていない。


「……おぬしの髪の色はどうなっておるんじゃ?」


 それでも一目で龍煇丸と蒼天にはわかったが、それはそれとして疑問ではある。龍煇丸の向かいに座った蒼天は不思議そうに聞いた。

 しかし龍煇丸は、何が分からないのかが分からないとでも言いたげであった。


「ありゃ傀骸装だよ。顔やら体格は変わんないけど、髪形とか服くらいならいくらでも好きに出来るぜ?」

「……そ、そうなのか?」


 今まで蒼天たちの傀骸装した後の服装は、その時に着ていたものと同じであった。しかしよく考えて見れば戦闘で服が破れても解除すれば治っていたので、服装も込みで傀骸装ということになる。ならば龍煇丸の言うことも当然ではあるのだ。


「そーだよ。戦いなんだからさ、アガる格好しなきゃな」

「まあそれは分かるが……しかし、眼帯はいるのか? わざわざ視界を狭める利点はなかろう? それとも暗所対策のつもりか?」

「暗所対策?」

「うむ。急に暗いところに飛び込んでも問題ないように目を暗さに慣らしておくのじゃ。海賊などの眼帯は基本的にそれが目的と言われておるのじゃが……違うようじゃの?」

「うん。だって俺の左目、元から見えてねーもん」


 あっさりと龍煇丸は言った。

 蒼天は龍煇丸の左目をじっくりと見る。しかし特に変わったところはなかった。


「ま、俺にも色々あるのさ。流石に無意味に眼帯つけたりはしねーよ」

「まあ、それはそうか」

「別に見えなくても困んねーしな」


 龍煇丸は特に気にしている様子もないので、蒼天もそれ以上深いことは聞かないことにした。

 そして改めて龍煇丸を見ると、頭を下げた。


「先日は助かった。感謝する」


 蒼天にとってはけじめのつもりである。龍煇丸はきっと、楽しい戦いの匂いがするから、くらいのことだったのだろう。しかしそれはそれとして忠江を助けることが出来たのだから、しっかりと礼を言わねば気がすまなかったのだ。


「ま、別にいーよ。感謝ならお嬢にしてくれ」

「……お嬢?」

「そーそ。うちのお嬢様だよ。お前のことを心配して、一人にしないでやってくれって頼まれてさ。俺、その子の頼みにゃ弱いんだ」


 龍煇丸はそう言うが、その相手が誰なのか蒼天には心当たりがない。


「あれ、知り合いじゃないんだ? 小さくてツインテールで笑顔が宝石みたいに眩しい素敵な女の子なんだけどさ。アオゾラも一年なら同学年だろ?」

「ツインテール……というと、もしかしてようかん娘か?」

「――は?」


 急にそう言われて龍煇丸は声を低くして蒼天を睨んだ。怒りの籠もった声である。

 知人のことをそんな風に呼ばれれば当然の反応ではある。蒼天はすまないと思い素直に謝った。


「……すまぬ。シキじゃの」


 龍煇丸は頷く。


「そーそ。詩季ちゃんだよ。うちのお嬢様だからな。どういう経緯かは知んないし、別にお前にまでお嬢様扱いしろとは言わねーけど、ようかん娘なんて呼び方はしないように」


 そう言われると確かに、蒼天は詩季のことをようかん娘と呼ぶことがほとんどだったと思い、それはそれで悪いなと蒼天は一人反省する。

 そして昨日、熱に魘される中で詩季と会ったことを思い出した。かなり意識は朦朧としていたが、詩季が自分の身を案じてくれたことははっきりと思い出した。


「休みが明けたら、シキにも礼を言わねばの」

「うん、わかりゃいいよ」


 龍煇丸は満足して笑う。


「そんでこっから本題なんだけどさ」

「そういえば話したいことがあるとか言っておったの? なんじゃ」

「お前、検非違使(けびいし)に入んない?」


 龍煇丸にそう提案されたが、まず蒼天は検非違使の存在を知らない。龍煇丸は桧楯から聞いているものと思い込んでいたので省いたのだが、聞いていないようなのでまずはその説明から始めた。

 話を聞いて蒼天は色々と納得がいった。今まで学校や裏山での戦闘の痕跡を隠蔽していたのも検非違使なのだろう。

 桧楯が、兄妹揃って戦士の家系と言っていたのである程度予想はしていたが、思った以上にしっかりと組織なのだなと蒼天は思った。


「ここんとこ物騒だしさ。流石に実働部隊が四人ってのはキツくてね。しかもほら、昨日月宮殿が落ちたでしょ? あれのせいでどこの支所もてんやわんやしてて人員補充とかしてもらえそうにないから、どう?」

「ふむ、まあ大変なのは分かるが……余はどうもそういうのは肌に合わなさそうでの」


 蒼天はすげなく断りを入れた。

 龍煇丸は少し残念そうな顔をした。


「そっか。まあ、面倒くさいことも色々あるからな。金払いだけはいい職場なんだけど、そういうことな、仕方ないね」


 しかしその言葉を聞いた途端、


「やる!!」


 と手の平を返した。


「現金なやつだなお前。ま、別にそーいう分かりやすいのは嫌いじゃないけどね」


 龍煇丸は笑いながら書類を取り出し、検非違使についてより詳細な説明を始める。

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