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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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dear my friend_2

 仁吉と泰伯を置いてどこかに行ってしまった蒼天と龍輝丸は今、裏山を降りていた。

 なお、蒼天は龍輝丸の小脇に抱きかかえられている。


「は、放せ。放さんかー」


 蒼天にとっては不本意であり、必死になって抵抗しているがそれは言葉だけであり、手足をばたつかせることさえ出来ないほどに消耗している。


「仕方ないだろ。だってアオゾラ、疲れきってんじゃん。でもどっか行かなきゃならないところがあるんだろ? だからまあ、連れてってやるから大人しくしてろよ」


 そう言いながら龍輝丸は凄まじい速さで山中を駆け下りている。今の龍輝丸は傀骸装しているので夜の山道などなんの支障にもならない。


「いやまあ、連れて行ってくれるのはありがたいのじゃが――余はまだ、どこに行きたいとか何も言っとらんのじゃが?」

「皆まで言うなよ。――ラーメン屋だろ? 朝の五時までやってる店知ってるから安心しろよ」

「全然違うわ!!」


 大真面目な顔をして見当違いなことを言う龍輝丸を蒼天は怒鳴りつける。

 しかし龍煇丸は爽快に笑いながら、


「んで、タダエちゃんの家ってどっちだ?」


 と聞いた。


「……おぬし、分かっておったのか?」

「そりゃ分かるでしょ。事情は知んないけど、何度も名前呼んでただろ? なら、安否を確かめたいんだろーなーって」


 龍煇丸は、簡単なことだよと言外に言っていた。

 ならば最初からそう聞いてくれればいいのにと思いながら蒼天は忠江の家の場所を教えた。


「ところでおぬし、あのフード男にはエンゲツと呼ばれておったの? 南茨木エンゲツが姓名ということでよいのか?」


 移動中、ふと気になって蒼天は聞いた。

 龍煇丸は首を横に振り、前に仁吉に説明したように自分の境遇を語る。

 それを聞きながら蒼天は、お気楽そうに見えてこいつにも色々あるんだな、などと考えていた。


「ふむ、しかしそうなると余はおぬしのことをなんと呼べばよい?」

「別に何でもいーよ。アオゾラの好きにすりゃいいさ。あ、でも学校と戦闘時は分けてくれよな」

「ふむ。ならまあ、無難にリュウキマルと呼ぼうか」


 龍煇丸はあっさりと、それでいいと言った。蒼天のほうが後輩なのだが龍煇丸は呼び捨てにされることに特に抵抗はない。それは龍煇丸が細かいことを気にしない性格だからというのもあるが、呼び捨てにされることをすんなりと受け入れている自分がいることに龍煇丸は少しだけ驚いていた。


(そーいやアオゾラの奴、(みな)ちゃん先輩のこともフツーに呼び捨てだったし、それで南ちゃん先輩特に何も言ってなかったな)


 と、戦闘中のことを思い出していた。

 戦闘中なので細かいことを言わなかっただけかとも思ったが、しかし南方の顔色や声からも特に不満に感じている様子はなかったと龍煇丸は思う。


(じゃあ、まーそういう奴なんだろうなアオゾラは)


 雑にそう解釈しながら龍煇丸は足を止めた。


「さ、この辺りだろ? こっからどう行きゃいいんだ?」


 そう聞かれて蒼天はため息をつく。


「……そういやおぬし、方向音痴じゃったの」


 二人が今いる場所は、目的地のほとんど真逆の位置だった。

 完全にそれを失念していた蒼天はもう一度、一つ一つ丁寧に道を説明しつつ忠江の家の近くまで運んでもらった。

 まだあたりは真っ暗であり、月が天頂に昇っている。蒼天は龍煇丸に降ろしてもらうと、おそるおそる忠江の家に向かうと――そこには、前に見た時と同じように忠江の家があった。

 蒼天は、ひとまずそれで安堵した。

 つい先日は更地だったはずの場所に急に一軒家が立つということなどありえない。ならば、蒼天には仕組みは分からないが、忠江という存在が一度いなかったことになり、羿を倒したことでその消滅自体がなかったことになったのだろうと解釈した。

 本当ならば今すぐにでも呼び鈴を鳴らしたい気持ちであるが、流石に時間を考えてそれは止めた。明日にでもまた改めてくればいいかと思っていた、その時である。


「……ヨッチ、何してんの?」


 呼びかけられて、蒼天は思わず目尻に涙を浮かばせた。そして声の主――逆瀬川忠江のほうに向かって走り出した。

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