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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
238/388

don't call me the hero

 羿を前にして合流した仁吉、泰伯、龍煇丸の三人は近距離から絶え間ない攻勢を仕掛けている。

 その時には船乗りシンドバッドも鑿歯(さくし)との戦いを終えており、三人に矢の軌道を見切るための術をかけ直していた。

 先ほどまでは船乗りシンドバッドと三人の距離が離れたこともあって効果が切れていたのだが、今はその援護があり、加えて間合いを詰めたこともあって羿は苦戦を強いられている。

 龍煇丸は正面から羿を直接狙い、仁吉と泰伯は左右に別れて矢を放とうとする羿の腕と弓の弦を狙う。誰が言い出したわけでもなく、打ち合わせすらしていないのだが三人の連携はとても上手くいっていた。

 羿の不利はまだある。

 蒼天の構えている金色の弓だ。

 羿のような、星を落とすという破壊力こそないが、その技量は間違いなく羿に匹敵する。今は仁吉たち三人が迫っていて混戦になっているので蒼天は撃っていないのだが、羿が三人から距離を取ればその瞬間に蒼天は羿を狙うだろう。

 接近戦という弓兵にとって不利なこの状況が蒼天の狙撃を遮っているという状況である。むしろこれだけ不利な条件下で戦いながら、蒼天たちは未だ決定打に繋げられていないというのが羿の戦士としての技量を物語っている。


「ははっ、流石は神話の英雄だな!! 三対一でやってるってのにこうまで凌いできやがる!!」


 龍煇丸は楽しそうに笑っていた。


「だけど、その体は三国さんの友達で、玲阿の――僕の妹の友達のものだ。君の境遇に思うところはないではないけれど、君を倒すことにも躊躇いはないよ!!」


 泰伯は真剣な顔で無斬を振りながら確実に羿を攻め立てていく。龍煇丸を主攻として立て自分は援護のつもりではあるが、しかし少しでも隙を見せれば迷わず自分で決める心積もりだ。

 龍煇丸たちに隙はなく、蒼天は常に弓に矢を番えて羿を狙っている。だがこの状況をどう切り抜けるかよりも、抑えがたい苛立ちが羿の頭を支配していた。

 そのせいで羿は、蒼天がチャリオットを走らせて接近していることに気づかなかった。


「リュウキマルよ、すまぬが――腕一本もらうぞ(・・・・・・・)!!」

「――いいよ、もってけ!!」


 蒼天の短い言葉で龍煇丸はその意図を理解した。そして右手を振り上げ羿に迫る。

 その背後から(・・・・・・)矢が飛来し(・・・・・)龍煇丸の(・・・・)二の腕を(・・・・)吹き飛ばしつつ(・・・・・・・)、羿の腹を射抜いた。

 味方が近くにいて狙撃が出来ない状況を、味方ごと敵を撃ち抜くことで打開したのである。


(……こいつら、手足のこと部品か道具くらいにしか思ってないのか?)


 仁吉は理解出来ないといったように顔を歪ませる。

 傀骸装とはいえ痛覚はしっかりとあるのだが、射抜くほうにも射抜かせるほうにもまるで躊躇いがなかったからだ。

 しかも龍煇丸は事も無げで、矢を受けて怯んだ羿の鳩尾に痛烈な蹴りを叩き込む。右腕はなくなり血がだらだらと零れているのだがまるでお構いなしだった。


「はん、射日の英雄がなんじゃ!! おおかた、追放された場所に戻りたいという程度のくだらぬ動機であろうが――そのような妄執に、余の友を巻き込むでないわ!!」


 蒼天が吠える。顔に怒りを顕にして、さらに追撃のために矢を番えた。


「余の友を――忠江を返せ!!」


 それらの声が羿の心を乱す。

 羿はついに堪らなくなり、大きく後ろに下がる。そして蒼天に狙われることさえ厭わずに、太陽をも射落とす神力の矢を番えた。

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