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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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white moon rising_2

 九嬰の首を二つ落とし、さらにその背に登った仁吉は七つの頭に囲まれながら余裕があった。

 そしてここまでで確信したことがある。

 自分の身体能力――より正確に言うのであれば移動速度と跳躍能力が格段に上昇していると。

 傀骸装の効果もあってそもそも普段の自分より運動神経が上がっているというのは分かっていた。しかし仁吉の場合はさらに、より俊敏に動きたいと思った時にそれまでよりもずっと素早く身体が動くのを感じるのである。

 仁吉はこれもまた骨喰の能力なのだと理解した。

 まだそうと分かっただけなのでこれから検証を重ねる必要はあるが、これは十分に便利である。


(下手に攻撃技がたくさんあるとか、特殊だけど使い方を考える必要があるような能力よりこういうののほうが余程いいや。MPLSみたいなのがあっても僕じゃきっと使いこなせないだろうしね)


 自分の好きな現代能力ライトノベルに例えながら仁吉は周囲を見る。そこでは相変わらず七つの蛇の頭が仁吉を睨んでいた。しかし、すぐに何かを仕掛けてくることはない。

 いかに意思疎通が出来ないとはいえど、他の頭や自分の元となっている身体を傷つけるかもしれない、というくらいのことは分かっているらしい。

 しかし問題はない。

 敵が仕掛けてこないのであればこちらから仕掛ければよい。

 仁吉は尾の蛇の頭のほうへ駆けた。骨喰に風の刃を集めると、地面を蹴って体を宙に浮かせながら体を捻って振り返り、風の刃を左肩の二頭に向けて放った。

 油断していた左肩の二頭はあっさりと首を落とされる。その勢いのまま一度、九嬰の背に足をつけるともう半回転して骨喰で尾の頭も刎ねる。一瞬の早業であった。

 残るは頭の三頭である。

 ここまで減らされると九嬰にも躊躇いはない。他の頭を落とされた怒りを込めて、炎と水を吐き出してくる。

 流石にこれを躱して三頭を斬るのは無理と判断して仁吉は一度、九嬰の背から降りた。

 さてここからどうするかと考えた時、不意に頭の中で獣の咆哮が聞こえた。それを仁吉は直感で、虎だと判断した。

 そして、両手の骨喰が白い光を放っている。


「――なるほど」


 仁吉は足を止めて九嬰のほうを見る。

 九嬰の左右の蛇の頭は、口を大きく開いてその中に炎と水を充填していた。風の刃は届かない。しかし仁吉に恐怖はない。

 空を羽ばたく鳥のように両腕を大きく広げて腰を落とす。そして、力強く地面を蹴った。

 白い光が閃く。

 仁吉の体は今や流星のように真っすぐに九嬰の首目掛けて突き進んでいた。

 そしてそのまま炎と水を躱して進み、残る三つの首を引き裂いていた。

 自分でもよく分からぬ力で突き進んでいた仁吉は、それが切れると空中に放り出された。少しだけ焦ったが、傀骸装の身体能力があるので着地に問題はない。

 しかし、不意に急激な疲労が体を襲い、仁吉はその場に膝をつく。


「……なるほど。必殺技だけあって、体力消費も多いってわけか? ああいや、魔力って言うんだったかな?」


 流石に少し休憩しないときついと判断して、仁吉はその場に大の字で寝転がった。


「さて……技名どうしようかな?」


 そんなことを考えていると、仁吉はふと頭の横に何かがあるのを見つけた。

 それは醤油差しくらいの大きさの黒い陶器だった。手にとって見ると中に何かがはいっているらしく、からからと音がした。

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