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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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irregular four plus one_2

『まず起きたことから話すと――月宮殿が落ちた。といっても、そこの焱月(えんげつ)以外には何のことか分からんだろうがな』


 船乗りシンドバッドはそう言った。そして、


「えー……マジで?」


 と少し訝しげな目をしている龍煇丸はともかく、仁吉と蒼天はまるで内容が通じてはいない。しかし泰伯は神妙な顔をして顎に手を置いている。


「その言葉は何処かで……あ、もしかしてヒタチちゃんが言ってた、激ヤバアイテムの保管所かい?」


 前に『転生鬼籙(きろく)』の話をした時に桧楯が一度だけ言及していたのを泰伯は思い出した。その問いにシンドバッドは頷く。


「……そんなところが簡単に落とされるなよ」


 仁吉は疲れたような声で言う。いや、疲れるのはこれからだという予感を改めて感じた。


「いや、あのね(みな)ちゃん先輩。普通落ちないんだよ。過去千年くらい何もなかったらしいしさ」

「じゃあせめてあと百年くらい頑張ってくれなかったものかな!?」


 仁吉が叫ぶ。


『――そういう言い方をしてやるな。これに関して検非違使や月宮殿に非はない。ただ、相手が悪かったというほかあるまいよ』

「なんじゃ、敵に心当たりがあるのかの?」


 蒼天が聞き、船乗りシンドバッドは頷く。


「やはり不八徳絡みかい?」

『ああ。話が早いな』


 泰伯が聞くとまた船乗りシンドバッドは肯首したが、そこで蒼天が待ったをかけた。龍煇丸も頭に疑問符を浮かべている。


「フハチトクって何?」


 蒼天と龍煇丸は不八徳という言葉を聞いたことがない。泰伯たちがさも当然のように話しているが、そこで会話に躓いてしまったのである。


『“鬼名”を持つ悪党の集団だ。そこの焱月は――まあ、とりあえずは敵だとだけ認識しておけ』

「……雑じゃの」

「ま、俺は別にそれでいいや。要は――ぶっ飛ばして問題ないってことだろ?」


 蒼天はため息をついたが、龍煇丸はむしろやる気が漲って来たと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべた。


「で、そやつの“鬼名”は何なんじゃ? まさかもったいつけるつもりではなかろうの?」


 蒼天は急かすような声で言う。


『ああ。今回の敵の鬼の名は――“夷羿(いげい)”だ。射日の弓主、あるいは単に“羿(げい)”とだけ言ったほうが分かりやすいかもしれんがな』


 そして船乗りシンドバッドはあっさりとその名を――敵の“鬼名”を口にした。


「……どのあたりが分かりやすいんだよ? 南茨木、お前分かるか?」


 仁吉は横目で龍煇丸に助けを求める。しかし龍煇丸も肩をすくめながら両手をひろげて、さっぱりだ、と笑っていた。

 しかし泰伯と蒼天は心当たりがあるようで――訝しげな顔をしていた。

 特に泰伯は、


「あのさシンドバッド。分かるは分かるよ。だけど――その名前が(・・・・・)どうして(・・・・)鬼名(・・)なんだい(・・・・)?」


 と険しい顔をして船乗りシンドバッドを見た。

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