irregular four plus one
つい先ほどまでは学校の裏山で、そして今は何処とも分からぬ異空間の中で不揃いな五人が一堂に会している。
無愛想な保健委員長の三年生――南方仁吉。
愛想の良い生徒会の副会長――茨木泰伯。
派手な赤毛で口調が独特な一年生――三国蒼天。
好戦的な笑みを浮かべた二年生――南茨木琉火こと焱月龍煇丸。
そして、フードつきの黒マントを羽織った、顔も分からぬ影法師のような謎の人物――船乗りシンドバッド。
分かっていることは、どうやら今は何か変事が起きていて、ここは敵陣のただ中であるらしいということどけだ。
船乗りシンドバッドの登場で少し落ち着いた――船乗りシンドバッドを除く四人は、周囲を見回して本人なりに冷静に状況――この場にいる他の人間を分析し始める。
仁吉は、
(……しかし、落ち着いて見回して見ると、茨木の奴に龍煇丸までいるのか。既にかなりうんざりとしてるが、まだ龍煇丸のほうがマシかもとか思うのはかなり感覚のマヒだよな。幸い、あの赤毛の子はこの中ではまともそうなのが救いと言えば救いだが……)
と考えていた。
泰伯は、
(シンドバッドまでいるのか。南方先輩に三国さんもいる現状だと頼もしいな。南茨木さんは分からないけれど――これだけのメンバーがいるのは、わけも分からないまま巻き込まれたにしてはかなりの僥倖だね)
と楽天的な思考でいる。
龍煇丸は、
(うーむ。なんか、面倒くさそう。こういう寄り合い所帯はあんま好きじゃねーんだが――ま、この空間からしていかにも危なげだし、強い相手と戦えそうな予感だけはヒシヒシとするからいっか!! 後はとりあえず、アオゾラだけ生かして帰れるようにすればお嬢にも義理は立つし、南ちゃん先輩と茨木の奴は自力でどうにかするでしょたぶん)
と、泰伯とは違う方向に楽観的である。
そして蒼天は、
(……なんじゃこの地獄のような面子は)
と、一番深刻に事態を受け止めていた。
まずは泰伯を見る。
(ヤスタケどのは……うむまあ、今回は悌誉姉の時のように知らぬところで変な義理だの恩だのがあるなどということはないじゃろう!! そう思っておこう!!)
次に龍煇丸を横目で見る。
(桧楯の姉の此奴は……なんか、バトル大好きオーラが顔に出とるの。興が乗り出すと他人の言うことに耳をかさなさそうじゃ。戦闘力や瞬間的な突破力はあるが、長い目で見ると衆の和を乱す――集団戦においては危うさを妊むタイプじゃ。個ならばよいが、軍の中においては扱う将や王の素質が問われる人材じゃの)
そして次に――目に力を込めて仁吉を睨みつけた。
(あの者――桧楯の妹とデートしておったあの陰気な男が、一見すると穏健で常識人のような顔をしておるが一番危うい!! 胸の奥に何かを秘めておって、土壇場で理性よりも感情を優先する。ある種、戦闘狂よりも悪辣な本性を抱えておるような気配がある!!)
蒼天の分析は、仁吉本人でさえ自覚のない仁吉の本性だった。蒼天は王として過ごした前世の経験と直感から、仁吉の気質をそのように見たのである。
そして泰伯を除く三人は最後に船乗りシンドバッドについて――。
仁吉は、
(なんだか、『僕は自動的なんだ』とか言いそうな格好してるよな。それはそれとして……なんだか、気に食わないんだよなこいつ)
と感じていたし、龍煇丸は、
(こいつは……分かんないけどすっげぇ嫌だな。南ちゃん先輩に感じたのとはまた違う、いけ好かない気配がしてくるや)
と本能で感じていた。
そして船乗りシンドバッドと面識のある蒼天は、
(相変わらず……胡散臭い奴じゃの。他の三人だけでも厄介なところに、さらに面倒くさい奴が増えおってからに!!)
と心の中で悪態をついていた。
そして三人にそんな風に思われている当の船乗りシンドバッドは、顔をフードで隠したまま淡々と話し始める。
『――まずは、今の状況から説明するか。どうせお前たちは、何も把握しないまま勢い任せに飛び込んで来ただけなのだろう?』
「事実ではあるが、一言多いのおぬし」
蒼天は余計なお世話と言わんばかりに船乗りシンドバッドを睨む。しかしそれはそれとして現状に説明は欲しいのでその言葉に耳を傾けることにした。