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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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irregular four_3

 いいかげんな道を教えた、と蒼天に指さされても龍煇丸はすぐに何のことか分からなかった。前に坂弓公園で蒼天に会った時のことを完全に忘れていたのである。

 しかしその言葉を聞いた仁吉は眉をひそめて龍煇丸を睨んだ。


「……お前、あの方向感覚のくせに人に道教えたのか? それってほとんど犯罪だぞ?」

「えー、(みな)ちゃん先輩酷くない?」

「酷くない」


 口を曲げて拗ねるように言う龍煇丸に、仁吉はばっさりと言い切った。

 仁吉も蒼天同様、『坂弓フードフェス』の時に龍煇丸の方向感覚のせいで酷い目を見ているからだ。

 そして、その会話の中で泰伯は気づいたことがある。


「あれ、もしかして君……二年の南茨木(みなみいばらき)さんかい?」


 龍煇丸と二年の南茨木琉火(るか)が一致したのだ。


「イグザクトリー!! しっかし、なんでこのタイミングで分かったんだよ?」

「いや、その……ヒタチちゃんのお姉さんってところで。彼女も確か南茨木姓だったなぁと」

「なんで桧楯のこと知ってんの? あ、さては生徒会の役目にかこつけて一年の女の子物色してた?」


 龍煇丸はニヤニヤと笑いながら泰伯を見る。しかし泰伯は首を横に振りつつも少し後ろめたそうな顔をした。


「いや、まあ……色々あったのと」

「のと?」

「その、家電メーカーみたいな名前だから、覚えやすくて」


 泰伯は少し言いづらそうだった。前回の悌誉との戦いのことをどのくらい話して良いものか迷ったというのもある。

 そして桧楯の名前を覚えたきっかけの一つにそれがあるのも本当なので正直に言う。そして蒼天は、その気持ちが分かると言わんばかりにうんうんと頷いていた。


「まあしかし、どうせならこんな、人をチビ扱いするような無礼者よりも桧楯が来てくれたほうが余はよっぽど嬉しかったがの」


 そして先ほど龍煇丸から受けた扱いを思い出し、龍煇丸の顔を見ずにあてつけのように言う。しかしその言葉に龍煇丸は目を活き活きとさせて蒼天を見た。


「なんだ赤毛ちゃん、お前、桧楯と一緒に戦ったことあるのか!?」

「……う、うむ」


 龍煇丸の声の熱量に押されながら蒼天は頷く。


「どうだった、桧楯は?」

「……いや、その。とても腹の据わった、良き楯兵ぶりであったぞ。その胆勇と心の強さに余は何度も助けられた」

「おー、なんだよお前分かってんじゃないか!! 赤毛ちゃん、名前は?」

「み、三国蒼天じゃが?」

「アオゾラか!! いいね、もっと褒めてくれよ俺の自慢の妹を!! あいつ、引っ込み思案で遠慮気味だけどめちゃくちゃ凄い奴だろう!?」


 龍煇丸は興奮気味である。そして蒼天の両肩をがっしりと掴み、桧楯について熱弁しだした。


「カッコいいだろうちの妹!! そんでもって可愛いだろ? しかもいざ戦いになると度胸も満点と来てる!! 正直俺だって思うぜ、ここに桧楯がいたらってさ!!」

「お、おう。うむ、そうじゃの……」


 龍煇丸の熱に蒼天は困惑していた。

 そして横でそれを見ている仁吉も、よく分からないような目で見ている。

 しかし根っからのシスコンである泰伯には妹が褒められたら嬉しいという心情が理解出来るので、龍煇丸の理解者のような顔をしてうんうんと頷いている。

 その時だった。


『――いつまで歓談に耽っているつもりだ? ここは敵陣の真ん中だということを忘れてはいないだろうな』


 矢のような鋭い声が四人の耳朶を打つ。

 そこにはいつの間にか、黒いフードつきのマントを羽織って顔を隠した人物――船乗りシンドバッドが立っていた。

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