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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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afternoon dogfight_3

 ひとまず(りょう)は落ち着いたようなので、仁吉と日輪で話を聞くことにした。しかし陵は、前から広利(ひろとし)のことが嫌いであり、その広利に癇に障ることを言われたのがきっかけで歯止めが利かなくなったと言っている。

 その説明では納得のいかないようなところもあったが、日輪の証言でも先に言いがかりをつけたのは広利のようなので仁吉としてはとりあえずその言い分を飲むしかなかった。

 代わりに、今回のことは生徒会長と風紀委員の顧問である夙川先生に報告するということ、そしてもしまた同じようなことがあれば場合によっては停学などの厳しめの処置になるかもしれないということを陵に言い含めた。

 無論、これらの判断は仁吉の独断であり、陵への戒めとして強い言葉を意図的に使っている部分はある。

 正直なところ、この騒動の本当の契機など仁吉には分からない。日輪にも心当たりがないとのことなので、その真相を明かすのは無理ではないかというのが仁吉の見解である。

 傍目には常識人でも、大人しそうでも、その胸の奥に何を抱えているかなど他人には推し量れない。そのことは仁吉自身が誰よりも分かっているつもりなので、それを無理に暴こうとは思わなかった。

 ただしそれはあくまでも仁吉の意見であり、大事になるとそんな曖昧な言葉だけで片付けられないとも分かっている。

 仁吉としても、可愛い後輩であり、頼りになる副委員長に厄介事に関わって欲しくないという私情もある。

 なので少し強い言葉を使ってでも、これを戒めとして、そして、休日で人目のない場での事件だったということを幸いとして、なるべく穏便に収めてやりたいという気持ちはあった。

 実際、陵はとても聞き分けがよい。

 広利への嫌悪は変わらず、謝罪をする気はないようだが、それ以外は素直に仁吉の言葉に耳を傾けている。


「なあ、えっと……ヒノワくん、でいいかい?」


 仁吉は一緒になって話を聞いている日輪を見た。


「はい。名字の東向日(ひがしむこう)でも、名前の日輪でも、呼びやすいように呼んでください」

「なら……東向日くん。さっき陵くんにも言ったけど、今日のことは僕から夙川先生と蔵碓――生徒会長に話しておくよ。あまり大事にするつもりはないけれど、君にも少し……池田くんと陵くんが接触しないように、可能な範囲で気をつけてあげて欲しい。頼んでも構わないかい?」


 仁吉のその頼みに日輪は頷く。

 それを見ると仁吉はまた陵のほうを向いた。


「なら。別に、合わない相手や嫌いな奴がいるというのは悪いことじゃない。人間、どうしたってそういう相手は一人か二人はいるものさ。だけどそこで派手に揉めれば周囲としては見なかったことには出来ないからね」


 そして陵に諭すように言う。

 陵も反省はしているらしく、仁吉の言葉を素直に聞いていた。


「問題はあっちだな」


 仁吉は格技場のほうを見る。中では泰伯が広利に話を聞いているのだ。

 陵のほうが落ち着いたがまだ広利が暴れていて、手の空いた泰伯は仁吉と代わって広利を抑えると、そのまま凄まじい剣幕で格技場のほうへ連れていったのだ。


「あいつ、キレたら怖いタイプなのかい?」


 仁吉が日輪に聞く。

 少なくとも仁吉には、泰伯が声を荒げて怒りを顕にする様は今まで想像出来なかった。


「いえ、普段はああではありませんよ。ですが広利――池田とは昔からあんな感じですね」

「それはなんとなく……分かる気がするよ」

「広利はまあ、見ての通りの奴なので」

「……剣道に限らず、スポーツやる上で一番必要な者が欠けてる気がするよ。よくあの性格で剣道部辞めさせられていないものだね」

「泰伯は何度か部長に言ったそうなのですが、聞き入れられなかったと」


 そう聞いて仁吉は少し意外そうな顔をした。

 剣道部の部長は信姫である。部長としてやることはしっかりやっていると思っていたので、そこが気になった。


(まさか、彼も不八徳だとか?)


 少しだけそんなことを考えながら仁吉は改めて格技場のほうを見る。中でどんなやり取りが行われているかは分からないし、わざわざ覗きに行こうとは思わないが、行きがかり上、事の顛末を見終えるまでは帰れないなと仁吉はため息をついた。

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