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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter3“*oon *as**e *a*ling”
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tonight will be sunny with meteor_2

 扉が開く音を聞いた時から、蔵碓に遅いと文句を言う準備をしていた慶は現れた人物――門戸厄神(もんどやくじん)左府(さふ)を見て唖然としている。


「どーも」


 左府はけだるげな顔をして、あくびを噛み殺しながら軽く慶に会釈した。


「あの、門戸厄神くん。会長は?」


 千恵が聞く。左府が自発的に来るとは露も思っておらす、蔵碓に連れて来られたと思ったからだ。


「あん、蔵碓のオッサン来てないのかよ? 人には来いとか言っといたくせに」


 その言葉に一同は呆然とした。

 そしてすぐ、真剣になって顔を見合わせる。


「え、崇禅寺が連れてきたんじゃないのかよ?」

「……会長、何かあったんですかね?」

「会長なら大丈夫だとは思うけど、それより左府だよ。あいつが自発的に来るなんて天変地異の前触れとしか思えないんですけれど!?」


 慶、千恵、泰伯は声を落とすこともなくそんな話をしだした。しかし左府は気にかけることもなく、自分の席に座って船こぎをしながらスマホを見ている。

 その時、再び生徒会室の扉が開いた。

 今度は勢いがよく、そこには息せきを切らした蔵碓の姿がある。


「す、すまない。少し所用が長引いてしまってね。もうみんな揃っているか」


 和服を着たメガネの大柄な男、生徒会長の蔵碓は開口一番、謝罪を口にした。

 先ほどまでは文句を言おうとしていた慶だったが、今はもうそんなことはどうでもよくなっている。


「……今夜は雪だな」

「……槍かもしれませんよ?」

「……僕は、月や星が降ってきても驚きません」


 慶、千恵、泰伯がそう言うのを、蔵碓は首を傾げながら見つめていた。

 しかし泰伯たちはそれを説明してくれないので、蔵碓は不思議そうにしながらも席に着き生徒会の打ち合わせを始める。

 これから夏休みまでの生徒会としてやるべきこと、監査の慶の他委員会についての報告など内容自体はそう多くはなく、一時間程度で打ち合わせは終わった。

 しかし泰伯たち三人は、話は聞いていてもつい左府のことを気にかけている。左府は、一応話は聞いているが発言はしない。

 そして何事もなく打ち合わせは終わった。

 終わると蔵碓は用事がまだあるのでこれで、と足早に去っていき、左府も億劫そうに立ち上がり生徒会室を後にしようとする。

 その時に三人の視線を感じたので、


「……なんすか?」


 と面倒くさそうな声で聞いた。


「いや、お前が来るなんて珍しいと思ってな。どういう風の吹き回しだよ?」


 泰伯は直截に聞いた。


「別に。なんとなくだよ。蔵碓のオッサンもうるさいしたまにはな」


 気だるげな声で左府は言う。

 泰伯は信じられないといった顔で左府を見た。


「嘘だろ、お前がそんな真面目な理由で生徒会に顔を出すもんか!? 会長の圧を受けてもしつこくされても意思を強くしてサボり通すお前の反骨精神はどこへ行った!?」


 思わず泰伯は叫ぶ。


「……なんか、いい風に言ってますけど、要するに根性のあるサボり魔ってことですよね?」


 千恵が隣の慶に小声で言う。


「まあな。だけどまあ確かに、蔵碓に絡まれるくらいならたまに一時間くらい我慢したほうがマシというのはわかる。それでもあいつは全然来ないからな」


 慶は呆れたように言いながら、そう考えると泰伯の表現は的を射ているかもしれないと一人納得した。

 そして当の、根性のあるサボり魔と言われた左府は、


「……最近できた女が、生徒会の役員とかカッコいい、ってさ」


 とぶっきらぼうに言った。


「よし解散。お疲れ、千恵。連休楽しめよ」


 慶はその話でもう興味がなくなり、立ち上がると千恵を労ってその肩を軽く叩いた。


「あ、はいお疲れ様です桂先輩」


 千恵も普通に立ち上がり慶と一緒に生徒会室を出ていく。残された泰伯は、いっそ感心するとさえ言いたげな苦笑いを浮かべていた。


「……お前はちゃんと、期待を裏切らないよな」

「なんだよそれ、褒め言葉か?」

「僕がお前を褒めることなんてないよ。ポジティブな言葉で罵倒してるだけさ」


 そう言われても左府は他人事のようにふーん、とだけ返事をして、ポケットから取り出したスマホに視線を落とした。

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