表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
187/390

dear my friend

 琥珀は宣言通り、ピッチャーに残っていたビールを飲み干すと、もうそれ以上追加で酒を飲むことはなかった。


「さて、帰るとするか。悌誉、歩けるか?」

「……まあ、なんとか」


 琥珀の問いかけに悌誉は疲れた声で返した。


「ならタクシー入り口まで頑張れ。私は玲阿を運ぶから蒼天と忠江は桧楯を支えてやれ」


 そう言うと琥珀は玲阿に肩を貸して歩き出す。その足取りはとてもしっかりしていて、酔っ払いには見えなかった。

 蒼天と忠江は桧楯を両方から支えながら感心している。

 そうして六人が坂弓公園の入り口のあたりに着くと、そこには二台のタクシーが待っていた。表示は「迎車」になっている。


「私は玲阿と桧楯を乗せて行くから、悌誉は忠江だけ送ってやってくれ」


 そう言って琥珀は悌誉にポンと一万円札を渡す。


「琥珀ちゃん、絶対にこんなにいらない」

「釣りは取っておけ。どうせあぶく銭だ」


 そう言うと琥珀は桧楯と玲阿を乗せてもう一台のタクシーに乗り込み、タクシーは走り出した。

 悌誉は有無を言わせず手渡された一万円札を見ながら、


「なあ蒼天。週明け、琥珀ちゃんにお釣り返しておいてくれ」


 と蒼天に言った。


「……そじゃの」


 蒼天も頷き、忠江と三人でタクシーに乗り込んだ。

 そして目的地を指示したのだが、思っていた以上に忠江の家と悌誉たちの借りているアパート、「涼虫荘」は近くだったので忠江の家の前で三人とも降りることにした。


「あれ、ヨッチと悌誉さんの家もこの近くなんですか?」


 悌誉と蒼天が同居していることを知らない忠江はそう聞いた。

 蒼天は少し考えてから、


「あー、色々あって一緒に住んでての」


 と言った。

 忠江はそれを特に追及することもなく、そうなんだ、とだけ言った。


「ま、今日は楽しかったぜヨッチ。悌誉さんもありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとう。私も楽しかったよ逆瀬川さん」

「うむ、余も楽しかったぞ。ではまた週明けじゃの?」

「機会があったらまた月曜くらいに遊ぼーぜ。レアチに連絡すっかもだし。あ、てか住所教えてよ。そしたらトツれるじゃん!?」


 忠江に言われて蒼天はアパートの住所と部屋番号を教えた。

 そして忠江は家の中へ入っていく。


「さて、余らも帰るとするかの」

「そうだな」


 その背中を見送ると蒼天たちも自分の家へ帰ることにした。

 そして翌日とその翌日も――蒼天と忠江が会うことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ