you are bad at lying_2
一通り食べ終えると龍煇丸はとても満足そうな顔をしていた。
その正面で仁吉はのんびりと缶コーヒーを飲んでいる。流石に相手が何かを食べているのをただ見ているのは口寂しくなったのだ。
そして気がつけば時刻は夕方の四時ごろになっていた。
「さて、んじゃこのあたりでお開きにすっか」
「そうだな」
「んじゃまた、怪異退治の時とかはよろしく」
気軽に龍煇丸は言った。
「怪異ってそんなぽんぽん出るものなのか?」
「いや、ほとんど出ないよこの街。前に蔵碓のオッサンも言ってただろ?」
そう言われて仁吉はああ、とその時の話を思い出した。
「だからこの街の、検非違使って、実働メンバーは俺と兄貴と妹、後は蔵碓のオッサンだけだね」
「全員未成年じゃないか!?」
仁吉は検非違使という組織の体制に不信感を抱いた。
「まーね。前は派遣で来てた人とかいたんだけど、今は人手不足らしくてね」
「……隠れてるとはいえ、国の機関なんだろ? それが人手不足を理由に未成年働かせていいのか?」
「ま、そのあたりはグレーなんだよね。でも金払いだけはいいよ。先輩も折角なら正式に検非違使になったら?」
龍煇丸の口調は、自分のバイト先はいい所だからどうですかと言うくらいの緩さだ。そして理由にとってはそんな感覚なのだろう。
「……悪いね、遠慮しておくよ」
「えー、でもどうせ先輩、目の前で何か起きたら放ってはおけないタイプでしょ? なら見返りにお金貰えるようにしといたほうがお得じゃない?」
「給料をもらってしまったら、目の前じゃなくても行かなくちゃならないんだろう? 僕はそこまで善人じゃないよ」
冷めた目で言う仁吉を見て龍煇丸は、
「ま、それもそうか」
と頷いた。
「先輩ってさ、よく蔵碓のオッサンと親しくやれてるね」
そして何の気なしに言った。
それは龍煇丸にとっては他愛ない所感のつもりだったのだが仁吉は目を細めて龍煇丸を睨んだ。
「ああ、ごめんね。余計なこと言っちゃったかな?」
「……別に」
口で否定はしていても、含みがある。
龍煇丸は少し、虎の尾を踏んだような気になった。
しかしあまり気にすることもなく、席を立つ。
「んじゃーね先輩。フラれはしたけど今日は楽しかったよ」
「……そうか」
「後さ、今度暇なら組手でもしてよ」
「……蔵碓にでも付き合ってもらってくれ」
無愛想な返しをして龍煇丸を見送ると、仁吉は残っているコーヒーをゆっくりと飲む。
「親しくやってる、か――」
そしてポツリと、龍煇丸に言われたことを口にした。




