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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
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the drunker and ogre

 蒼天がどうにか運営テントを見つけ、水のペットボトルを貰って帰ると、そこでは玲阿と悌誉、そして桧楯が疲れ切った顔でテーブルに突っ伏していた。

 琥珀は、一々店とテーブルを往復するのが面倒になったのか、2リットルはあるであろう大きめのピッチャーにビールを買ってきて手酌で飲んでいる。

 そして忠江はその横でオレンジ色のドリンクを飲んでいた。


「ところで琥珀ちゃんさー、マジのぶっちゃけカレピとかいないの? 酒とかギャンブル以外でさー?」

「いないな。特に欲しいとも思わんし」

「かー、これだから美人は!! いいなー、私も一回でいいからそんなカッコいいセリフ言ってみたいねー!!」

「なんだ、彼氏欲しいのか忠江?」

「そりゃ花のJKになったからには青春したいじゃんねー!! こう、イケメンで優しくて甘々スイートな日々に憧れるもんでしょーよ。ほら、命短し恋せよ乙女ってねー」

「お前ならそのうち出来るだろ」

「そのうちっていつ? 明日明後日一年後ー?」


 忠江はいつになくテンションが高かった。


「おい琥珀、まさか酒飲ませとらんじゃろうの?」


 蒼天は真剣にそれが心配になった。水のペットボトルを琥珀の前に置くと忠江のコップを取り上げて匂いを嗅ぐ。少なくとも、アルコールの匂いはしなかった。


「なんだ蒼天、私をなんだと思ってる。隠れて飲むのを否定はしないが、目の前で酒飲み出したら流石に止めるぞ」


 琥珀は心外だと言わんばかりに眉にしわを作った。


「そーそ、だいたいお酒なんて飲まなくたってこの世はハッピー、人生バラ色、幸せ満開サクラサクっしょー」

「……それでシラフというのも、なんか逆に心配になってくるがの」


 傍目に見れば琥珀よりも忠江のほうが酒飲みのような陽気さである。念の為、蒼天は忠江にも水を飲むように勧めた。


「で、悌誉姉らはどうしたんじゃ? なんだか酷く疲れ切っておるが?」

「……何も、聞くな」


 悌誉が見た目どおりの憔悴しきった声で言う。


「……いや、聞いてくださいッス」

「どっちじゃ?」


 桧楯が蒼天の服を掴んで言った。蒼天は反応に困って玲阿のほうを見る。


「よ、よっちゃん……。みなまで、言わないで……」

「まだ何も言っとらんが!?」


 蒼天には何がなんだかわからなかった。

 仕方なく、一番状況を把握していそうな琥珀に聞くと、


「なんか忠江が急に踊ろうぜ、とか言い出して全員巻き込んで暴れてたな」

「なんでそれで忠江だけ元気なんじゃ!? 玲阿も悌誉姉も体力はあるほうであろうに!?」


 蒼天のその疑問に返事はない。踊っていたという三人は皆くたくたであった。


「まーまー、いいじゃんそんなこと。それよりヨッチも踊ろーぜー。曲は『ダンシング・ヒーロー』あたりでさ」

「盆踊りか?」


 蒼天は思わず突っ込む。坂弓市では夏の盆踊り大会には何故かJ-POPを流すという風習があった。


「やるわけなかろう。この三人でへばるような激しいダンスなどしたら余は帰れなくなる自信があるからの!! いや、帰れても明日は確実に筋肉痛になるの!!」


 蒼天は頼りないことを堂々と言い放つ。

 琥珀は横で酒を飲みながら口をはさんだ。


「いいじゃないか。どうせ三連休なんだ。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々、だ」

「……見る阿呆がなんか言うとるの」


 琥珀は席を立つ気配すらない。


「そういうはしゃぎ方をする齢じゃないからな。人目も憚らず騒いで踊って倒れる、なんてことが出来るのは今のうちだぞ?」


 呑気にそんなことを言ってまたビールを飲む。

 それに追随しようとした忠江が、不意に口をつぐんで背筋を伸ばした。

 そして琥珀の背後から、氷のように冷かやかな声がする。


「なるほど、それは確かに金言です。昼日中から生徒の前で酒盛りに興じている人は言うことが違いますね?」


 その背後には、風紀委員の顧問で体育教師。そして琥珀曰く友人の女性――夙川義華が立っていた。

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