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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
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shopping mall“Girald”

 坂弓市の中心部。JR坂弓駅の北側にある大型ショッピングモール『ヒラルダ』。名前の由来はスペイン南西部にあるヒラルダの塔である。ショッピングモールというには面積が狭く、その代わりに高い。五階建てで地下は二階あり、外観はその由来の通り塔のように見える。

 このモールの一階、フードコートに蒼天はいた。

 時刻は朝の十時半であり、蒼天はそわそわしながら待ち合わせた相手が来るのを待っている。

 そして待ち合わせの相手――詩季(しき)の姿を見つけると落ち着きを取り戻し真剣な顔で詩季を見る。


「……なによ、そんな深刻そうな顔して。というかなんでこんなところで渡す必要があるわけ?」


 詩季は不機嫌そうな顔をして蒼天を睨む。その手には『藤雀堂』と書かれた白い紙袋があった。


「例のブツは持ってきたかの?」


 蒼天は声を落として聞いた。


「危ない取り引き感出すのやめてくれない!?」

「む、しまった。どうせならば同じ鞄を用意して足元に置いて取り替えるとかすればよかったの」

「だ、か、ら!! 普通に和菓子渡すだけじゃない!!」


 詩季は苛立ちながら蒼天の前に紙袋を差し出す。

 蒼天は少し震えた手でそれを受け取ると周囲を見回してからゆっくりと中を確認する。

 そこには『水羊羮』と書かれた白い直方体の箱が確かにあった。


「――確かに受け取った。ご苦労であったの」

「……あくまでその雰囲気でいくわけね。もういいわ、好きにして」


 詩季は諦めてため息を吐くとそのまま踵を返した。


「おや、もう帰るのか?」

「昼から用事があるのよ。じゃあね」

「そうか。帰り道には気を付けての」

「今のノリでそのセリフやめてくれないかしら?」


 そう言って去っていく詩季の背を眺めて、蒼天は改めて紙袋の中身を見る。

 当然ながらそこには先程と変わらず水ようかんがあった。

 今まで蒼天はその存在は知っていても食べたことはおろか実物さえ見たことがないものである。

 あまりに貴重で、その上味は絶品ということで、このようかんをめぐって裏取り引きや暴力沙汰が起きたとか、裏道を使って一日二個入手した人間が『藤雀堂』の常連客に袋叩きにされたとか、ネットで転売しようとした者が店に消されたといった噂まであるほどである。

 そんな代物を持っていると考えると蒼天は急に、周囲を歩く人間すべてが自分のようかんを狙っているように思えてきた。


(……ど、どうやって家に帰るべきかの? というかこの『藤雀堂』の紙袋がまずまずい気がしてきた。ううむ、こうなればまずはこれをコインロッカーにでも預けてから他の袋を用意すべきか?)


 そんなことを考えながら、とりあえず紙袋をぎゅっと抱きしめて周囲をキョロキョロとしていると、


「何してるんスか蒼天さん?」


 背後から声をかけられて蒼天は思わずそちらを睨み付けた。


「何奴じゃ!?」

「ひ、ひいっ!!」


 振り向きざまにそう言われた声の主――南茨木桧楯(ひたち)は肩を竦めた。


「おいやめろ蒼天。というか、本当に何してるんだお前?」


 蒼天の行動を隣にいた女性――蒼天の同居人でもある南千里悌誉がたしなめる。

 蒼天はそこで少し落ち着いた。そして、


「……なんで二人が一緒におるんじゃ?」


 と聞いた。

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