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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
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coffee shop“Santa Teresa”_3

 喫茶店『サンタテレサ』についた仁吉は落ち着かない様子で店内を――聖火に指定された窓際の席を見た。

 二つあるテーブル席の片方は空いており、もう片方の席には、聖火の言った通りに赤いリボンを髪を巻いた、黒い長髪の少女が座っていた。

 少女はぱっちりとした目が特徴的で、全体的に整った顔立ちの中にほんの少しだけ年相応のあどけなさを残している。

 服装はお洒落な黒いブラウスに青いホットパンツ。そして座っている席の横には羽織ってきたであろう赤いロングジャケットが掛けてあった。

 彼女は仁吉のほうを見ると軽く会釈する。

 仁吉もつられて会釈をするが、制服で来てしまった自分がとても場違いで、そして申し訳なく思えてしまった。


「その……君が、聖火の言ってた子でいい、のかな?」


 仁吉はしどろもどろで言う。

 そう聞きながら席につき、改めて彼女の顔を見るとうっすらとだがメイクをしていることがわかった。

 最低限の身だしなみだけでやってきた自分がますます不誠実に思えて、仁吉の胃は罪悪感に押し潰されてキリキリと軋みをあげている。


(どうしようこれ……。メッキが剥がれないどころか、剥ぐようなメッキすらないぞ僕)


 今さらすぎる後悔が仁吉に押し寄せる。

 そして対面の彼女はそんな仁吉の様子を不思議がる素振りもなく、むしろ推し量るように見つめていた。


「あの、先輩。今日は……ありがとうございます。それと、ごめんなさい。聖火ちゃんを間に立てて一方的に呼びつけるようなことをしてしまって」

「……いや、それは構わないよ。むしろ、僕のほうこそごめんね。デートの経験なんて全然なかったから、制服で来ちゃってさ」


 仁吉は早いうちに、素直に謝ることにした。

 その態度を見て彼女はくすっ、と笑った。


「いえ、大丈夫ですよ。むしろ私も、普段の学校と同じ先輩のほうが落ち着きますので」

「……そうかい?」


 きっと気を使われているのだろうとは思いつつもその言葉で仁吉は少し気が楽になった。


「ところで、申し訳ないんだけど……普段の学校と同じと言うけれど、どこで会ってるのかな? 心当たりがなくてね」


 仁吉はまた申し訳なさそうに言った。


「いえ、気にしないでください。というか、ほとんど私が一方的に知ってるだけですから。それも聖火ちゃんや兄に聞いてです」

「お兄さん……? あ、そういえば君の名前をまだ聞いてなかったね」


 今更ながらそのことに気付いた。

 彼女も自己紹介がまだだったことを思い出したらしく、少し照れくさそうに髪を撫でながら言う。


「……私、二年の南茨木琉火(るか)といいます」


 その名字に仁吉は覚えがある。とてもよく知っている相手だったからだ。


「もしかして君、如水(じょすい)の妹さんかい?」


 その問いに彼女――琉火は頷いた。

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