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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
157/385

juvenile delinquent_2

 ここ数日で人が変わる。

 それで仁吉が真っ先に思い当たることと言えば一昨日の転生騒動である。

 といっても、泰伯、蒼天、桧楯は犾治郎から転生鬼籙(てんせいきろく)などのことについて詳細を説明されているが仁吉はそういった話を誰からも聞いていない。昨日の昼休みに泰伯と話した時にも不八徳と八荒剣の話が大半であった。

 しかし泰伯が少しだけ前世というものについて言及していたこと。そして、弓道部の西向日(にしむこう)由基(ゆうき)に聞いた夢の話からして、何かしらの理由があって坂弓高校の生徒の多くが前世と繋がりを持ってしまったのだろうという推測だけはしていた。


(とはいえ……夙川先生は元通りだし、また別件か?)


 そう考えながら、凰琦丸のことを思い出し仁吉は少し背筋が震えた。

 その震えを誤魔化すように延利に聞く。


「人が変わるってどんな感じなんだい?」

「うまくは言えないんだけどさ。今までは喧嘩したり夜遊びしてても、その行動そのものを叱られたり注意されていら立つことはあっても、それそのものは楽しんでやってたっぽいんだよ。だけど最近はなんか、いつもイライラしてるっていうか、楽しくなさそうなんだよ」

「弟くん、最近何かおかしな夢を見たとか言ってなかったか?」


 仁吉は探るように聞いた。


「さあ、どうだろうな? そういう話とかまったくしないし。楽しくなさそうってのも俺の見たままの感想だし。もしかしたら単に遊んでる人間関係で何かあったってだけなのかもしれないしさ。そう考えると……人が変わったは言い過ぎだったかもしれない」

「それなら、とりあえず様子見でいいんじゃないか?」

「まあそうだな。ありがと南方。聞いてもらって少し気が楽になったよ」

「いや、いいよ。大したことは言えなかったけれど、そう思ってもらえたなら何よりだ」


 そう返したものの、仁吉は頭の中で一人考えを巡らせていた。

 無論、それは一昨日の事件についてだ。

 検非違使という存在がいること。そして不八徳が関わっているということは蔵碓と泰伯の話でわかった。しかしそれ以外の、本質的なところで仁吉は蚊帳の外である。


(さて、どうするかな? もう一度茨木の奴に話を聞くのは……最終手段だな。それよりは、あいつが蔵碓に説明するのを待って蔵碓に聞くか? でも、どうも茨木の奴の昨日の言い方だと、ところどころで言えないような事情がありそうだったしな。関係者に口止めでもされてるなら相手が蔵碓でもあいつは話さないだろう。となると――)


 泰伯が言っていた、どこにいるかわからない男と、信用ならない男という二人を思い出した。

 しかしどちらともこれだけの情報でどこの誰かもわからないのだ。つまり手がかりは皆無に等しい。

 腕を組んで教室を見回していると、ちらりと目に入るクラスメイトがいる。今日も今日とて白い着物を着て登校してきている美人な女子生徒――御影信姫だ。

 信姫は自分の席に座って本を読んでいる。タイトルまでは見えないが、装丁のしっかりとした緑色の本だということだけはわかった。

 彼女であれば間違いなくすべての事情を知っているだろうという確信はある。

 しかし、


(どうせはぐらかされるだろうな)


 としか思わない。

 そして仁吉は、諦めた。もういいかという投げやりな気分になってきたのである。

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