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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
154/384

what's my soul name?

「で、本題から逸れたんだけどさ」


 話の流れでつい犾治郎の前世の話をしてしまったが、泰伯が本来聞きたかったのはそれではない。

 不八徳と八荒剣のことである。


「せやな。でも、さっきも()うたけど、なんで不八徳(ふはちとく)八荒剣(はっこうけん)(えびす)から選ばれとるんかはボクにもわからん。シンドバッドの奴はなんも教えてくれんし」

「わからなくても、何か思うことくらいはあるんじゃないのかい? 犾治郎は頭がいいんだからさ」

「えーそない褒められると照れるなー」


 清々しいまでの棒読みである。


「でも、悪いけどこれに関してはほんとにわからんわ。情報が少なすぎる。だからまあ、調べとくわ。何か手がかりが見つかったらそん時に話すわ」

「ああ、頼むよ。しかし――」


 泰伯は神妙な顔つきをした。


「八荒剣も夷ってことは、僕も何かしらの夷ってことだよね?」

「まあせやろな」

「でも僕には前世の記憶とか、おぼろげにすらないんだよね」

「別に全員が前世のこと覚えとるわけでもないんちゃうか? それにボクかて前世のこと認識してたけど、別に物心ついた時からちゃうしな。これから思い出すことかてあるやろ」

「というか犾治郎――」


 泰伯が目を細めて犾治郎を見る。


無斬(むざん)を――僕の剣のこと知ってたよね? なら、僕の前世、“鬼名(きめい)”のことも知ってるんじゃないのかい?」


 その眼差しに犾治郎は、ふざけずに返した。


「可能性はいくつか思い当たるけど、言わんよ。自分の名前くらい自分で思い出したほうがええで」


 そう言われて泰伯は、


「……まあ、それはそうだね」


 と頷いた。


「まあでも、一つだけアドバイスしといたるわ。泰伯くんはそんなもん、あんま気にせんでもええよ。いや――気にせんほうがええ、()うべきかな?」

「……というと?」

「泰伯クンは三国さんと南千里先輩の鬼名(きめい)解魂(かいごん)を見たからそれを気にするんやろ? 確かに鬼の名を持つもんにとってあれはとっておきの切り札や。いや――鬼札かな?」

「……それ、うまいこと言ったつもりかい?」


 誇るような顔でわざわざ言い直した犾治郎を泰伯は冷めた目で見つめる。その視線が犾治郎の気分を萎えさせた。


「えーそれで鬼名解魂についてやねんけどー」

「露骨にやる気なくすなよ」

「どーせ僕はつまらん男ですよー。センスなんてないに等しいからなー」

「面倒くさいなお前!! コーラでも買ってきてやるから機嫌直してくれないかい!?」

「……んじゃコーヒーのラージ。アイスのブラックで」


 情報料のようなものだと諦めて、仕方なく泰伯は言われた通りの物を買ってきた。コーヒーを飲むと少し気分がよくなったようで話を再開した。


「鬼名解魂は確かに強い。発動させればその間、使用者の魔力が増大する上にそれぞれの“鬼名”に応じた力を振るえるわけやからな。けど泰伯クンに関しては別にいらんよ」

「なんでだよ?」

「無斬が十分強いからや。昨日かて、鬼名解魂した南千里先輩の燃える巨人を両断出来たやろ?」

「……なんでいなかったくせにそんなこと知ってるんだよ?」

「まあそんなことより」


 雑に話題を逸らそうとする犾治郎を見て泰伯はため息をつく。そして追及することを諦めた。


「泰伯クンの“鬼名”はボクも知らん。けどそんなもん知らんくても泰伯クンは戦えるよ。無斬は剣として間違いなく一級品や。どんな夷が鬼名解魂してもぶった斬れるほどのな」


 その言葉に遜色はない。


「じゃあ、僕が昨日とかあんなに苦戦したのは……」

「泰伯クンの持ち手としての技量やな。もう少し頑張りましょう、ゆうとこか?」

「……はい」


 泰伯は、出来の悪いレポートを教師に指摘された生徒のような顔をして項垂れた。

キャラクタープロフィール更新しました。今日は「御影信姫」です。

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