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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
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burger shop“Glotoneria”

 同じ日の放課後、泰伯は犾治郎を探していた。

 今日は賀路(ひろみち)に話して部活も休むことにしてある。理由については用事があるからとしか言っていない。

 嘘ではない。元から犾治郎とはもう一度話さなければいけないと思っていたところだったのだ。昼休みは仁吉に呼ばれていたので無理だったが、出来るならば放課後のうちに会って起きたい。

 家の場所は知っているので部活後に訪ねてもいいのだが、どうにもそういう気にはならなかった。昨日、風呂を借りてそのまま眠らされたせいで少し警戒しているのである。


(まあ別に、理由もなく何かしてくることもないだろうけれど……。逆に、理由があれば普通にやるんだよなあいつ)


 泰伯の犾治郎に対しての警戒心ははね上がっている。稽古をつけてもらい、色々と教えてもらった義理はあるがそれはそれだ。

 とにかく、どうにかして犾治郎に話を聞かなければと校舎を練り歩いていると。


「どしたん泰伯クン、何か探しもんか?」


 不意に背後から声を掛けられた。


「ああうん。ちょっと犾治郎のやつを探しててね」

「ボクを?」

「そう、君をだよ……。って、え?」


 振り向くとそこには泰伯の探し人、正雀犾治郎が普通に立っていた。犾治郎はにこやかな、しかし泰伯にとっては胡散臭い笑みを浮かべている。


「……いるな」

「そらおるよ。ボク、ここの学校の生徒やし」

「いやまあ、そりゃそうなんだけどさ」


 どうにも調子が狂う。意気込んで探そうとしていた泰伯は自分がとても馬鹿に思えてきた。


「で、ボクに何か用事?」

「……まあ、そうだな。ハッコウケンとか昨日のことの顛末とか、色々と聞かせろよ」

「ああ、なんやそのことか? 別にええよ。といってもボクもそんな詳しいわけちゃうけどな」


 そして驚くほどあっさりと犾治郎は頷いた。


「ま、ここで話すんもなんやしグロトネリアでもいこか?」

「まあ、いいけど……」


 そう言って二人は駐輪場に自転車を取りに行き、坂弓市の中心部、JR坂弓駅の南側へと向かった。

 繁華街が立ち並ぶその場所の一角に、ウッドデッキのある木造風、二階建ての建物がある。二階部分には赤と黄色の文字で『Glotoneria』と書かれたそこが二人の目的地である。

 バーガーショップ『Glotoneria』。意味は暴食であり、その名の通りのボリューミーで、しかしリーズナブルな価格から学生に好まれる個人経営の店である。

 犾治郎はそこでフィッシュ&チップスとコーヒーを、泰伯はダブルタルタルチキンカツバーガーとコーラ、そしてチキンナゲットを頼んだ。


「相変わらず量多いなぁここ。Mサイズで普通の店のLくらいあるで」

「それが売りだからね。これだけ頼んで千円いかないのはありがたいよ」

「まあボリュームはここの一つの売りやからな。でもこの店、味のほうもイケとるで。ポテトやナゲットでもチェーン店よりうまいし、フィッシュ&チップス置いとるのは珍しいよな」


 犾治郎はそう言いながら白身のフライをつまむ。ケチャップやタルタルソースはつけず塩を少し振りかけただけだ。


「そうかい? ポテトなんてどこも一緒だろう?」

「ここのやつのほうが油が少なくて芋が柔らかくて分厚いからな。それでいて安いんは個人経営の努力の賜物やろ。バーガーショップで、個人の店で学生相手に受けとる店とか珍しいからな。ちょっとお洒落で気取った店とかならたまに見るけどああいうのは割高で学生は気軽に入れんやん?」

「そういうものかい?」

「ハンバーガーだけで千円以上出すような店は学生の憩いの場にならんやろ。まあ、金持ちのボンボンが通うような私立高校とかの近くやったらそれでも流行るかも知れんけど坂弓では無理やな」

「まあ公立だしね」

「でも立地としてはここも微妙なとこやで。何せ反対側に行けばショッピングモールがあるからな。ハンバーガーチェーンなんていくらでもあるし、普通やったらそっちに流れそうなとこやけどな。そこは宣伝とかで上手く補っとるよ。このあたりの中高が半日で終わる日とか行事やる時とかに割引セールしたりしてな。こういう挙動が身軽に出来るのも個人店ならではや」


 犾治郎はやや饒舌だ。


「楽しそうだな?」

「ああうん、こういうお店分析とか比較とか好きでな。流行っとる店とそうちゃう店の違いとか考えるのはおもろいで」

「なるほど。それで?」


 泰伯は犾治郎を睨む。犾治郎の話は確かに面白いし、これはこれで興味深くはあるのだが、しかし今日はこういう話を聞きに来たわけではないのだ。


「ああ、そうやな。飲食店の儲かる条件はとりあえず、立地と原価率と周知活動やねけんどさ」

「その話じゃない!!」


 泰伯は段々といらいらしてきて、少し声を荒げた。しかし犾治郎は相変わらずにこにことしていて、


「なんやつまらんな」


 と言った。


「つまらなくて結構。そもそも、僕は別に面白い話をしてほしいわけじゃないよ。というか君、そんなのを求められるのは嫌だって言ってたじゃないか?」

「よぉ覚えとるなそんな話。で、泰伯クンは何が聞きたいんや?」

「主にハッコウケンの話だよ。それに、船乗りシンドバッドのこともだね。とにかく、知ってる話はできるだけ教えてくれ」

用語やキャラクターの設定集作りました。シリーズ化してあるので、目次のタイトルの上のところから見れるようになっています。よろしければそちらも是非見に来てください。

今日は「用語集」「学年・クラス一覧」とキャラクターの「南方仁吉」「茨木泰伯」「三国蒼天」を投稿しております。明日からもとりあえずストックがあるうちは毎日投稿していくつもりです。


気に入っていただければ感想、ブックマークなどよろしくお願いします!!


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