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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
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eight sword

「まあ、不八徳については概ねわかったよ。それで、ハッコウケンってのは何なんだ? 不八徳の対になるってことは――中華思想の側ってことか?」


 仁吉は泰伯に聞いた。しかしその問いかけに泰伯は首を捻る。


「それが……わかんないんですよね。そう考えるのが順当のような気がするんですが」

「が、なんだよ?」

「一応、先輩と僕以外にももう一人、ハッコウケンらしき人にあったんですよ。それと不八徳の一人にも遭遇しました」

「らしき、って、何を基準にそう判断したんだ? 武器に変わる珠を持ってるかどうかか?」


 そう言って仁吉は懐から自分の宝珠を取り出す。

 仁吉にも確証はないが、今のところ自分と泰伯の共通項は宝珠くらいしか思い付かなかった。


「はい。あともう一人、実に信用ならない男なんですがそいつもそれ――宝珠を持っていましてね。ですが……」


 泰伯の言葉は歯切れが悪い。

 不思議そうにしている仁吉に説明するべく泰伯は言う。


「昨日遭遇した不八徳も、宝珠を持ってたんですよ。武器に変わるところまで同じです」

「ならこの……ええと、宝珠だっけか? こいつは不八徳とハッコウケンの共通装備なんじゃないのか? だって夙川……オウキマルだって持ってただろ?」


 その言葉で気がかりを思い出し、話題が脱線するとわかった上で泰伯は聞く。


「そういえば夙川先生、大丈夫そうでしたか?」


 仁吉はうんざりとした顔をした。


「至って普通、いつも通りだったよ。……僕はずっと針のむしろだったけどな」

「……元の先生には戻ってたんですよね?」


 それならば問題はないのでは、とでも言いたげな泰伯を仁吉は睨む。


「何回、あの顔に殺されかけたと思ってる? あれは前世の人格だと頭では理解してても本能的に思い出すに決まってるだろ。一生もののトラウマだぞあんなの」


 夙川義華が担任である以上、これから一年間毎日顔を見なければならないと思うと仁吉はそれだけで憂鬱な気持ちになってくる。

 それは義華が顧問をしている剣道部に所属する泰伯も同じのはずなのだが、しかし泰伯はけろりとしている。

 しかも、


「夙川先生は夙川先生、オウキマルはオウキマルですよ」


 などと事も無げに言うものだから仁吉は軽い目眩に似た気分の重さを感じた。


(僕が神経質すぎるのか? それともこいつがずば抜けて豪胆なのか?)


 そう思った。そして、どちらを認めても癪な思いをするのは自分なので仁吉は深く考えないようにした。


「話を戻すぞ!!」


 有無を言わせないよう、仁吉は声を張った。

 泰伯は軽く謝ってから、元の話題についてまた話し始める。


「とりあえずオウキマルのことは置いておきましょう。彼女は前世の人格ですので何かの例外という可能性もあります。今世の人格で不八徳、またはハッコウケンかもしれない人から考察しませんか?」

「そうだな。とはいえ、僕は全然エンカウントしてないけれどな」


 仁吉はここでもやはり不八徳のことと同様に信姫の話を伏せている。理由は仁吉にもわからないのだが、話したくないと感じているからだ。


「とりあえず、不八徳とハッコウケンの共通装備が宝珠なんだろ? それ、そんなに気にすることか? 仮面ライダーだってライダーと怪人のルーツは同じじゃないか?」

「それはそうですけど……。え、そういう話なんですかねこれ?」


 泰伯は悌誉が鬼名を名乗り、蒼天もまた鬼名を持っていること。それが気になっていた。

 何故なら泰伯は八荒剣(はっこうけん)のことを聞いた時、先ほど仁吉が言ったように中華思想の文化圏内の力を持つものだと考えたからだ。


「僕に聞くなよ。まあ一つ確かなのは、ここで僕とお前がこうやって話し合ってても推論が増えるばかりだってことだな」


 仁吉の口調は投げやりだ。しかし泰伯も同じ感想だった。


「何か知ってそうな人物ですか……。二人、心当たりはありますが」

「お前が、なんですが、とか言うともう僕は嫌な予感しかしないぞ?」

「まあそうですね。一人はどこにいるかわからなくて、もう一人は……さっき言った、信用ならない男です」


 月明かりさえない山道をさ迷い歩いているような心地になり、仁吉は深く長いため息をついた。

 そして、狙ったようなタイミングで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

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