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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue4“inside my core”
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the worst fate

 教室で彷徨たちがそんな話をしていることなどつゆ知らず、泰伯と仁吉は屋上にやってきた。

 そして人のあまりいないところに座り込んだ。泰伯は彷徨から貰った菓子パンを一つ仁吉に差す出すと自分も適当に手にとって食べ始める。

 そして、


「昨日、あれから大丈夫でしたか?」


 何の気なしに聞いた。その質問に仁吉は深いため息を吐いた。


「全然。いやまあ、あの戦いより大変ではなかったけれど別の災難に巻き込まれてたよ」

「そうでしたか。ですが、こうしてまたお互い生きて話せてるじゃないですか。なら、とりあえずそれでよしなんじゃないですか?」


 そう言って声を弾ませる泰伯が、今の仁吉にはいっそう煩わしく思えた。


「……お前のそういうとこ、すごいと思うよ」

「そう言われると、少し照れますね」


 泰伯は褒められたと思って嬉しそうにしている。


(はぁ、何やってんだろ? こいつに皮肉なんて通じないってのに、どうして僕はこういう言い方をしてしまうんだろう)


 仁吉は自分に自分で呆れていた。あまりにも学習能力が無さすぎると。

 それはそれとして、何故泰伯は自分に対してこういう風なのだろうとも不思議に思っていた。

 およそ今から三年ほど前。仁吉が中学三年生で泰伯が中学二年生だった時――数奇な運命の廻り合わせで二人には縁が出来た。

 それは仁吉にとっては悪夢のような出来事で、泰伯にとってもきっとそうだろうとその時の仁吉は思っていたのである。

 しかし今の泰伯は何故かこんな感じである。


『僕はお前のことが嫌いなんだ。だから、僕の前に面を見せるな』


 一度、仁吉はそう言ったことがある。その時の泰伯はとてもすんなりと、


『わかりました。先輩に不愉快な思いをさせるのは僕としても心苦しいですからね』


 と言ったのである。

 そしてそれ以来、本当に泰伯は仁吉の人生に関わってこなかった。蔵碓が生徒会長になり仁吉が生徒会室に出入りするようになってからも、泰伯は律儀にその約束を守り続けて仁吉がいる時には顔を出すことをしなかった。

 その徹底ぶりがさらに仁吉を苛立たせていた。

 しかし泰伯にとってそれは何ということのないことであり、昨日、仁吉と凰琦丸の間に割って入りなし崩しに共闘する流れになったことさえ泰伯にとっては背信だと感じているほどだ。

 そして今日も、仁吉のことは心配ではあったが、泰伯は敢えて教室を訪ねて安否を確かめるようなことをしなかった。

 しかし仁吉から泰伯のほうに顔を出す分には問題がないと思っている。だから先ほど仁吉が泰伯を呼びに来た時には生存を確認出来たこと、仁吉と話せるということの喜びであんな反応になったのだ。

 最も、仁吉には今なおもって泰伯が何故自分に対してこんな態度を取るのかがわからないでいるのだが。

 少なくとも三年前のその縁は殺伐としたものだった。その時の泰伯の言動が理由で、今も仁吉は泰伯のことを嫌っている。


「それで、昨日のことなんだがな」


 それ以上考えるのが億劫になって仁吉は話題を変えた。


「蔵碓から何か聞いたか?」

「生徒会長から、ですか? 一応、放課後に話があるとは言われましたが……会長が何か関係あるんですか?」


 どうやらまだ話はされていないらしい。

 ならば、と諦めて仁吉は昨日蔵碓から聞いた話を自分なりに噛み砕いて説明した。

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