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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue2 “*lac*s*i*h in my soul”
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daily life of four_2

「しかし、二年生になってクラスも変わったというのに、代わり映えのしない面子ですね」


 始業式、ホームルームが終わり、人の捌けていった教室の中で、泰伯、彷徨、日輪と机を囲みながらそう言ったのは、彼ら三人とともに去年のクラスが同じだった伊丹孝直(いたみたかなお)である。彷徨と同じくらいの小柄さで、上下とも、黒地に白のラインがついたジャージを着ている。


「ま、いいじゃんか。今年もよろしく、ってことでさ。ドロー2」


 と彷徨。


「そうだな。これも縁だろう。ドロー2だ」


 と日輪。


「縁は縁でも腐れ縁だろう? まさか四人一緒とはね。はいドロー2」


 と泰伯。


「しかし、見事にまた四人一緒のクラスになりましたね。ドロー2」

「もうこれは、縁を越えて運命だよ。天が俺たちに、青春しろと言ってるのさ。というわけでドロー4」

「む、青春か。ならば――海にでも行くか?」

「まだ春だし、そもそもなんで海なんだい? はいドロー2」

「その古いような懐かしいような日輪さんの感性は嫌いじゃありませんけどね。では、ドロー4で」

「…………」

「どうした彷徨? 次は俺の手番なんだ。早く出してくれないか?」


 日輪に言われて、彷徨は頭を両手でかきむしりながら雄たけびをあげた。


「うっさいなー!! ないよないよー、ドローないよー!! なんでみんなこんなにドローばっか持ってるんだよーッ!!」

「何故と言われても、持っているから、としか言いようがないな」

「そういう時もありますよ彷徨さん」

「というわけで彷徨、都合……ええと、十八枚引いてね」


 日輪、孝直、泰伯に追い詰められて、彷徨は自棄になりながら山札からカードを引いた。残りの手札が四枚の泰伯、七枚の日輪、三枚の孝直と比べて、彷徨の手札は二十一枚と圧倒的な差になっている。


「くっそー、だが見てろよ。ここから始まる怒涛の追い上げ!! 俺の戦いはここからだッ!!」


 そう言いながら、同じ数字で揃えたカードを四枚出す彷徨。


「フラグ立てるの好きですね」

「勝ち目のない戦いに挑むその気概。嫌いではないぞ」

「ま、頑張りなよ彷徨。もしかしたらビリ回避くらいはできるかもしれないよ」

「そうですね。あ、スキップありました。彷徨さん飛ばして日輪さんですね」

「…………」

「悪いな彷徨」

「次は僕か。じゃあリバースで。また日輪だね」

「ふむ、俺か。ではドロー4を出すとしよう。それだけ手札があれば出せるだろう」

「…………」


 つい先ほどまでの元気が嘘のように静まっている彷徨を見て三人は、持っていないのだろうと察した。

 そして最終的な結果は、一着孝直、二着日輪、三着が泰伯である。彷徨は手札を十枚以上残しての最下位であった。


「くそ、もう一回だもう一回!!」

「あ、ごめんね彷徨。僕、これからちょっと生徒会に顔出してくるから」


 再戦に向けて意気込み、カードをシャッフルしようとする彷徨を制して泰伯は立ち上がった。

 泰伯は生徒会の副会長をしており、その用事があるのだ。


「あれ、そういえば泰伯さん。さっきもうそう言って出て行って、すぐに戻ってきませんでしたか?」

「……ああ、うん。会長との約束の時間を間違えていてね。さっき行ったときは誰もいなかったんだ」


 さきほど。ホームルームが終わってから十分ほど教室で時間をつぶしてから出て行った泰伯は、しかしすぐに戻ってきた。そして、ちょうど手札を配り終えたタイミングの三人に頼む形でゲームに参加したのだ。


「そーいうのきっちりしてるタイプの泰伯が時間間違えとか珍しいね。てか、それならそれで生徒会室で待ってればよかったんじゃないの?」


 彷徨はカードをシャッフルしながら言った。たとえ泰伯が抜けたとしても、負けたままで終わるのは嫌のようだ。


「それだと退屈だからね。じゃあ、僕はこれで。頑張れよ彷徨。一度くらい、勝てるといいね」

「応援してる!? ねえそれ本当に応援してるの? やめて、そんな同情とか哀れみとか色々こもってそうな目で見るのやめてくれない!?」


 半分泣きそうな目をしている彷徨の言葉を、泰伯は無言の笑顔だけで受け流して教室を出た。

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