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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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fighting brothers

 悌誉を倒したその後、蒼天もまた意識を失っていた。

 その間、ぼんやりとした意識の中で桧楯が誰かと話しているような声が聞こえた気がしたが、具体的な話の内容まではわからない。

 そして、その桧楯に体を揺すられてようやく蒼天は目を覚ます。


「お、おお。ヒタチ。大丈夫か?」

「それはこっちのセリフッスよ!! 蒼天さん、魔力ほとんど残ってないじゃないッスか!!」


 換装はいつの間にか解けていた。外傷こそないが体はまだ重く、起き上がることすらままならない。


「むしろ……おぬしはタフじゃの。察するにあの楯は、使用者の魔力を吸い上げて防御力を上げるような仕組みなのであろう? あれだけの大技を防いでもう動けるとは」

「……よくそんなことわかるッスね?」


 蒼天の推測通りだったようで桧楯は感心している。

 しかし無傷でまだ余力もありそうだった桧楯が悌誉の風林火山陰雷を防いだ直後に倒れたことを考えると、そう考えるのが蒼天にとっては自然だった。


「ま、私はどうにか……。兄貴に回復してもらったんで」

「おお、そう言えばおぬし、兄がおると言っておったの。って……え、来たのか? というか兄上も異能とか術式とか使えるのか?」


 さらりと言われて蒼天はそのことに驚いていた。


「そッスよ。兄貴が間に合ってればもっと楽だったんスけどね」

「……そんなに凄腕なのか?」

「天才すぎてドン引くくらいには」


 桧楯は気弱な声で言う。その態度に蒼天は、桧楯の遠慮がちな性格の理由を見た気がした。


「なに、おぬしの兄上のことはわからぬが――この勝利はおぬしあってこそじゃ。感謝する。だからおぬしは、自分の功績を誇るがよい」


 まだ重い右手をどうにか持ち上げて桧楯の頭を撫でる。そうされて桧楯は、照れくさそうに笑った。


「ところで、悌誉姉は?」

「それが……いないんスよね。あ、ちなみにヤスタケさんはあっちで寝てます」


 桧楯が指差した先で泰伯は剣を杖のように立て、胡座をかいて寝ていた。


「なんであんな寝方しとるんじゃ?」

「さっきから気になってたんスけどその換装ってもしかして傀骸装(くがいそう)のことッスか?」

「ほう、そう呼ぶのか?」

「魔力で体を作って置き換える戦闘用の肉体のことッスよね? うちの姉はそう呼んでるッスよ」

「……三兄妹揃って戦士とは、もはやそうゆう家系なんじゃな?」


 桧楯は頷く。どうやらそうらしい。どういう家なのだろうかと少し気になりはしたがその疑問は一先ず置いておくことにした。


「で、ヤスタケどのはなんであんな寝方をしとるんじゃ?」

「さ、さぁ……?」


 その質問に桧楯は首をかしげた。どうも桧楯が気づいた時にはもうあの体勢だったらしい。


「ところで……ヤスヨさん、どこ行っちゃったんスかね?」

「さあの?」


 蒼天は興味がなさそうな声でぞんざいに答えた。


「じゃが――まぁ、心配はあるまい。とりあえず――」

「は、はい」

「ちょっと寝るから適当に起こしてくれ」


 そう言うと蒼天は目を瞑り、夢の世界へと落ちていった。桧楯は何度か体を揺すってみたがまるで起きる気配がない。

 そして泰伯も、相変わらず座ったままで静かに寝息を立てている。


「……どうしろってんスか、これ?」


 残された桧楯は呆然としながら、元に戻った駐輪場の天井を見上げた。

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