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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
prologue2 “*lac*s*i*h in my soul”
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daily life of four

 泰伯が朝の準備を終えて学ランに着替え、坂弓高校へ着いたのは八時十五分くらいのことである。

 正門のあたりまで来た泰伯はそこで、こちらに向かって大きく手を振っている知己の姿を見つけた。


「おっはよー、やっすぅたけー」

「ああ、おはよう彷徨(かなた)


 声の主は泰伯の友人で去年のクラスメイトである烏丸彷徨(からすまかなた)だった。小柄な、線の細い、それでいて声の大きい少年だ。彷徨は私服校の特権を最大限に利用して、ジーンズに白の半袖Tシャツという格好をしている。


「今年も一緒のクラスなのでよろしくね!!」

「そうなのか。よろしくね。しかし彷徨、今日はやけに早いじゃないか。去年は週に三日は遅刻寸前のギリギリ登校だったっていうのに」

「うっさいな。俺はこの春休みで変わったんだよ。ほら、あれだよ。三日会わなきゃナントカ、ってやつ」

「男子三日会わざれば刮目して見よ、だね。でも僕は遠くからでもすぐに彷徨だとわかったよ」

「はっはっはー。そうでしょうとも、そうでしょうとも!!」


 調子に乗って笑っている彷徨を見ながら、その肩に優しく手を置いた者がいた。


「おそらく、今のは皮肉ではないかと思うぞ」

「え、そうなの日輪(ひのわ)?」


 彷徨の横にいるのは、彷徨と同じく泰伯の去年のクラスメイト、東向日日輪(ひがしむこうひのわ)だ。

 彫りの深い顔立ちに、細い目。体格は人並みだが背は170センチを超えており、もともとが大男なのだが、彷徨と並ぶとより巨大に見える。泰伯と同じく学ランを着ており、三人で並ぶと一人だけ私服の彷徨は浮いて見える。


「おはよう日輪。それと、そんなにすぐにバラしちゃつまらないだろう?」

「む、そういうものか? ならば、黙っておくことにしよう」

「えー、ひっどい日輪。教えてくれたっていいじゃん!! ちょっと難しい言葉を知ってるからってなんだってんだよー!!」


 日輪の横でぎゃあぎゃあと騒ぐ彷徨を見て、泰伯は諦めたようにため息をついた。

 そして、観念したように説明を始める。


「つまりね。男子三日会わざれば刮目して見よってのは、立派な男というものは三日も見なければ別人と間違うほどに成長しているものだから、目を見開いてよく見なければその相手とわからないって意味だよ」

「ほうほう」

「つまり、泰伯がお前を遠目ですぐにわかったというのは、目を見開くまでもない。つまり、成長が見られないという意味を込めてのことだろう」


 一連の解説を、泰伯は爽やかな笑顔と朗らかな声で、日輪は真面目な面持ちと冷静な声で行った。

 彷徨はそれを黙って聞いていたが、やがてポン、と手を打って、


「悪口じゃん!!」


 と大声で叫んだ。

 ふくれっ面をして抗議する彷徨に対して、泰伯はなだめるように彷徨の両肩に手を置いた。


「まあほら、そういう変わらない彷徨が僕は好きだよ。そういうことでいいじゃないか」

「むむ、なんか、いい話っぽく誤魔化そうとしてない?」

「だいたい、男子三日会わざればというがな、彷徨に泰伯よ。俺たちは昨日、一緒にカラオケに行っただろう?」


 日輪の言葉に、二人は思わず黙り込んだ。


「そーいやそうだったね」

「……完全に忘れてたよ」

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