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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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風林火山陰雷

 突撃しながら、蒼天も違和感を覚えていた。

 何もしてこないこともそうだが、骸骨の兵士たちのほとんどが蒼天のチャリオットを防ぐための要員として割かれている。


(半分に兵を割いて両面から突破されるくらいならば、片方に集中させて確実に防ごうとする。その思考はわかる。しかし――ヤスタケどのよりも余を警戒するか?)


 悌誉の立場で考えるならば、寄られると危険なのは泰伯のほうだと蒼天は思う。それは泰伯の戦闘力も勿論あるのだがそれ以上に、泰伯の持つ剣――無斬の存在が大きい。

 少しでも軍事、異能に触れたことがある者ならば一目でわかる。無斬という剣は尋常ではないと。

 鋼からして並ではない。

 そしてそれが極めて高い域の技術で鍛造されている。

 当てることさえ出来るのならば、素人が振り下ろすだけでも脅威となるだろう。

 そんな業物を、異能の戦士としては未熟でも、剣道、剣術を修めた者としては人並み以上の泰伯が振るうのだ。

 距離を詰められぬ方法が悌誉にはある。しかしそれは、詰め寄られれば脅威ということでもあった。

 対して蒼天は、数を統べることは出来ても、蒼天を含めて個々の戦闘力は知れている。目と鼻の先にまで間を縮めることが出来ても悌誉と戦えばよくて相討ちというところだ。


(先に余を潰して鬼名(きめい)解魂(かいごん)で得た数の差を減らそうというつもりか? しかしこの局面でそれをしてヤスタケどのにやられては元も子もない。それがわからぬ悌誉姉ではないはずじゃが……)


 ならば可能性は一つ。

 悌誉にはまだ何か、こちらに見せていない切り札があるということだ。

 そして――。


「謀を知りて風の如く、地の利を得て林の如く」


 悌誉が詠唱を始める。

 今まで悌誉が鞭以外で攻撃する時は、その術式の名しか唱えていなかった。しかしこれはどう聞いても術式の名などではなく、呪文のようである。

 そして悌誉の術式は『孫子』を下敷きにしているということと詠唱の内容を聞けば、この先に続くものは『孫子』素人の蒼天でも予想がついた。

 蒼天は御者に命じてチャリオットの速度を上げさせる。炎の道のことは度外視した。しかしその行く手を骸骨の兵士たちが固めており、それに手こずっている間に悌誉は詠唱を進める。


「惰気を(かす)めるは火の如く、鋭気を攻めずは山の如く、知り難きは陰の如くに、動くことは雷霆の如くに」


 そしてその間に、炎の巨人が動き泰伯がそれを止めていた。

 今から泰伯に炎の巨人を振り切って悌誉を止めさせるには無理がある。そうすれば、今度は炎の巨人が蒼天たちを纏めてなぎ払うことだろう。


「詐を持って立ち、分合(ぶんごう)以って変を為す」


 もう出来ることはほとんどない。躱せるとも思わない。

 そして――。


孫家(そんか)攻式(こうしき)奥義――“風林火山陰雷ふうりんかざんいんらい”」


 空からは金色の光の槍が降り注ぎ、悌誉を中心に爆炎が起きて周囲一帯を吹き飛ばした。

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