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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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south barbaroi army advance_3

 泰伯と蒼天は同時に悌誉のほうへ突撃していく。

 それまでの炎のラインの道は、可能な限り順番まで覚えて頭にいれた。

 そして――。


『直近三回が、彼女が炎のラインを使える場所だと――僕らがそう思って(・・・・・)いるように(・・・・・)動くんだ(・・・・)


 それが泰伯の提示した策だった。


『で、でもそれじゃ燃やされちゃうじゃないッスか?』

『そうならないように実際の道を確定させながら進むんだ。多少の犠牲を払っても、僕か三国さんが近づければ勝ちの目が見えてくる』

『……まあ、それはそうじゃろうの。鞭で近接戦闘が出来るとは思えんし』

『理想は僕と三国さんが無傷で近づくことだろう。だけど、多少の傷を負ってでも致命傷を避けて近づくことを考えたほうがいい』

『それはそうかもしれんが……』

『このやり方でどうだろうか?』


 そうして方針は決まった。

 泰伯は蒼天の兵士のチャリオットに乗ることも考えたのだが、咄嗟の時の機動力を重視して自分で走ることにした。

 足をやられればその時に同乗させてもらえばいいという考えである。


(おそらく、これが最後の突撃だ。余力を気にする必要はない。足が折れ、心臓が潰れたって突き進んでやるとも!!)


 その覚悟の通り、泰伯は我武者羅に、しかし通るべきルートを選んで悌誉に向かって走ってゆく。

 そして一歩、また一歩と距離を詰めていく。

 だが不気味なほどに悌誉は――何もしてこない。

 炎のラインはおろか、鞭を泰伯や蒼天に向けて放つことすらしてこないのである。

 もうあと一度の踏み込みで悌誉に剣が届くといったその時だった。

 それは、六度前に鞭が通った道である。

 泰伯の心臓がちょうどその上に来たところで悌誉が泰伯を睨んだ。


(ここだけ……避けろ!!)


 泰伯は強引に地面を蹴って体を逸らす。

 心臓から燃やされることはかろうじて回避したが、左手が炎に包まれた。しかしすぐに右手一本で剣を持ち、炎が全身に燃え広がる前に左手を斬り落とす。

 片手になったのは痛いが、それは必要経費だと泰伯は割りきっていた。

 そして、その攻防の間に蒼天が距離を詰めている。蒼天がその手に持った戈が悌誉の体に届きかけた時だった。

 悌誉の背後の、炎の巨人が動いた。

 そして無造作に大剣を振るう。


「――破軍(はぐん)風刃(ふうじん)!!」


 泰伯は無斬に黒い風を纏わせてその剣を受け止める。

 初めて使った時には詠唱を必要としたが、今はほとんど予備動作なしに出せているのは一週間の鍛練の賜物である。

 ただし威力は大きく下がるし、右手一本で支えている以上、どうしても圧されてしまう。それでも踏ん張っているのは、ほとんどが泰伯の意地によるものだ。

 押し勝とう、とは思っていない。

 この攻撃が蒼天に届かなければよいという考えである。

 そしてその見立ては――やはりまだ泰伯が異能を扱う戦士として未熟であることを示していた。

 ここまで、その片鱗すら出していなかった“切り札”を放つための言葉を、悌誉が口にする。


孫家(そんか)攻式(こうしき)奥義――“風林火山陰雷ふうりんかざんいんらい”」

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