south barbaroi army advance
「そういうことも、もっと早く言ってもらえんかの!?」
『ごめんね。ちょっと口を挟むタイミングが見つからなかったからさ。それにわかったのは本当にちょっと前だったしね』
泰伯は少しだけ申し訳なさそうに笑った。
「というか、あの会話の中ずっとヤスヨさんの攻撃見てたんスか?」
『うん。話ながらなら。まあなんとかなるよ。犾治郎にこういう術式の見抜きかたの訓練をつけてもらってたんだけどその時なんて……』
話ながら段々と泰伯の声が低くなっていく。
『……思い出したらまた無性に腹が立ってきたな。やっぱり生きて帰ったらあいつぶん殴るか』
「そーいう死亡フラグっぽいセリフは言わんでよいから悌誉姉の能力のルールを教えてもらえんかの!?」
蒼天に言われて泰伯は冷静さを取り戻した。
『ええっとね――あの鞭はそもそも一度に伸ばせる距離に上限があって、そこを越えると一度縮めて手元に戻してるんだよね』
「確かにそうしておったの」
『伸ばして縮めるのを一回として、三回の分までは鞭が通ったところに炎を走らせることが出来るみたいだ。あとは、縮める時に通った場所を燃やすのは出来ないらしいね』
「まあ、妥当なところッスね」
『ところがこれの厄介なところはさ、三回前の分までじゃなくて、三回分ってところなんだよ』
その言葉に蒼天と桧楯は首を捻る。泰伯の言う違いがわからなかったからだ。
『つまりね、鞭を走らせた場所に炎のラインを走らせるための……まあ、仮に道と呼ぼうか。その道を引くかどうかは最初に決めてるみたいなんだ。それで道を引くと決めて一回、引かずに二回、また引いて一回って攻撃するとしよう。そうすると、直前の三回の道だけを警戒してると一番最初に引いた道の上を通ったら燃やされるってことさ』
泰伯の説明を二人は一応、理解はした。しかし複雑な上に、やはり厄介な能力だと思う。
「つまりその、道を引いておるかどうかを見極めれねば軌道だけ覚えていてもどこに炎のラインが来るかがわからぬ、というわけか」
「というかそんな複雑な制約、よくわかったッスね」
『まあ検証だけはたくさんさせてもらったからね。そこは三国さんの能力に感謝してるよ』
泰伯は嫌みでなくそう言った。
「で、でもどうするんスか? その……道を引いてるかどうかの見分け方ってわかってるんスか?」
『それはわからないんだよね。見た限り、こっちで判断出来るような動作は必要ないらしい』
「それだとあまり意味がないではないか」
『けど対策は出来るよ』