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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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feather into the river_2

 殴られた蒼天は何がなんだかわからず目をぱちくりとさせている。しかし桧楯はそんな蒼天をキッと強い眼差しで睨み付けた。


「な、何するんじゃヒタチ!!」

『話が長いって言ったんスよ!! うだうだごたごた難しい話しやがって何様のつもりッスか!!』

「……な、何様と言われてもの」


 先ほどまでの落ち着きはなく、今の蒼天は完全に桧楯の気迫に圧されている。


「前世がどこの王様とか関係ないッスからね。ヤスタケさんもヤスタケさんッスよ。何をこんな言葉を黙って聞いてんスか!!」

『……まあ、三国さんの言うことは』

「もっともだ、とか言ったらあとでヤスタケさんもぶん殴るッスからね!!」

『えー、あー……ま、まあ一理くらいはあるかなぁ、と』


 泰伯もまた桧楯に圧倒されている。泰伯としては蒼天の言い分はわかるつもりでいたし、その上で蒼天と悌誉の選択を尊重しようと考えていた。

 しかしとてもそんなことを言い出せる雰囲気ではない。口に出そうものなら桧楯はこの乱戦の最中を走り抜けてでも泰伯を殴りに来そうな勢いである。


「大事なお姉さんなんスよね!! 死んでほしくないんスよね!! なら、前世がどうたらとかどっちを選ぶだとかうだうだ言わずに首に縄掛けてでも引きずってきてぶん殴って黙らせればいいだけの話じゃないッスか!!」

「し、しかしじゃの……」

「だいたい蒼天さん、最初に何て言ったんスか? お姉さん止めたいから力を貸してくれ、ッスよね。私もヤスタケさんもその契約でここまで来たのに今さら他の解決の仕方の手助けなんて契約違反ッスからね。そんなのは一人で勝手にやってください!!」


 桧楯の眼差しはいっそう鋭くなる。曖昧な答えは許されない。


「そうじゃの……。悌誉姉は余には身内で、前世で縁がある。しかしおぬしらは他人じゃ。巻き込んですまなかっ……」


 再び。桧楯が蒼天を楯で殴る。それも二発。


「な、何をするヒタチ!?」

「で、どうすんスか? 最初の契約通りにします? それとも一人で好きなようにしますか?」

「じゃ、じゃから一人で……」


 鈍い音がチャリオットの上で響く。

 先ほどまで熱を帯びていた桧楯の声は、今は氷のように冷ややかなものになっていた。


「それで――どうするんスか?」


 先ほどと同じように桧楯は問いかける。蒼天が同じ答えを返した場合の行動も変わりはしないだろう。


『……観念したらどうだい三国さん? 今の彼女はなんというか、こう……怒った時の玲阿に似てるよ。僕らじゃ絶対に勝てないと思うけれど?』


 その言葉に蒼天は心の中で感じた既視感の正体に気づいた。


「なるほど、確かにの。そう言われると――前に玲阿に顔をはたかれた時にそっくりじゃ」


 それは裏山で鬼の群れに追われていた時のことである。あの時も蒼天は独りよがりで傲慢になって、関係ないと他人を拒絶していた。


「すまぬのヒタチ。そしてヤスタケどの。改めて――悌誉姉を助けるため、余に力を貸してくれ」


 しかし蒼天にもう迷いはない。

 その頼みに、二人は強く頷いた。

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