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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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free your heat_2

「南茨木さんの言うとおり、強い能力には制約がある。なら――他にも縛りがある可能性もあるんじゃないかい?」


 泰伯は二人にそう言った。


『まあ、そりゃそうかもしんないッスけど。てかそうであって欲しいッスけど……』

『その希望的観測を頼りに(いたずら)に長引かせると外れていた時には詰みじゃぞ!?』


 蒼天の意見はもっともだ。しかし、そういう不安を与えてこちらにリスクの高い速攻をさせようというのが悌誉の狙いだろうとも泰伯は考えている。


「それならさ――なんで今まで使わなかったと思う?」


 こうして話している間にも悌誉の攻撃は続いている。作戦会議に費やしている時間はそれだけ三人の不利を増やしているのだ。

 それでも泰伯は冷静に聞き返した。


『それは……。余が悌誉姉を怒らせたから本気を出してきたのかの?』

「ということはつまり、冷静な時は使いたくなかったってことだろう。少なくとも向こうにまだ手詰まり感はないし、出し惜しみをしない性分なら最初から使ってるはずだ。だから、決して完全無欠というわけではないと思うよ」

『しかしの――』


 と、そこで蒼天は短く息を吐きながら観念したように言った。


『正直に申そう。余にもまだ切り札はある。しかし、これはおぬしの義理と似たようなものでの。悌誉姉の魂が『彼の者』とするならば、まだ使いたくないのじゃ』


 蒼天はバツの悪そうな顔をしている。しかし泰伯はそれを咎めることはしない。

 そして――そんな話をしている間に、悌誉の表情から段々と余裕が消えていた。それに合わせるように攻撃のほうも、苛烈ではあるが単調になってきている。

 三人が炎のラインを警戒して悌誉からなるべく距離を取った取っているというのもあるのだが、それを考慮しても全く当たらない。

 その中で泰伯は少しずつ、炎のラインの発現条件を絞り込んでいた。


(しかしもう少し検証したいな。この、今見えている条件が作り込んだ偽の制約で、こちらが見抜いたと思って突っ込んだところで罠に嵌めるつもりかもしれない)


 そう考えていたその時。

 不意に悌誉の動きがピタリと止まった。もちろん、だからといって迂闊に近づくことはしない。むしろいっそう恐ろしさが増したように三人は感じた。


「ゆる、さない……。滅べ、滅べ、滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ!!!! この地上から、世界から、歴史から!! 存在したという痕跡ごとすべて消え去るがいい暴君の国よ!!」


 悌誉が叫ぶ。

 そして――。


「嘆かれよ、怒りたまえ、怨みにて世を覆え

 夷方より攻め寄せる

 狄意満ち満ちて

 戎刃は血を求める

 蛮廻を此処に果たさん

 我ら蔑まれしもの

 奪われ、怖れられ、追いやられしもの

 天を破り、地を穢し、國を滅ぼす(えびす)なり!!」


 それは聞くだけでおぞましさを感じさせる詠唱だった。

 それを蒼天は無言で聞いている。

 泰伯は言い切らせてはならないと感じ走り出したが、炎のラインがその動きを阻むように現れ足を止めてしまった。


鬼名解魂(きめいかいごん)――」


 そして悌誉は口にする。

 己の魂の真名(まな)を。

 否定し、拒絶し、縁を切りたいと願ったはずのかつての名を。

 鬼と位置付けられた名を。


伍子胥(ごししょ)報讎(ほうしゅう)剛戾(ごうれい)忍訽(にんく)


 **


 chapter2“avenger breaks reincarnation”

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