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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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merchant’s lecture introduction

 今の攻防の間、悌誉はちらりとも泰伯のほうを見ていない。にも関わらず悌誉は炎のラインを走らせ、桧楯はいち早くそれに気づいた。


「何かわかったのであろうヒタチ!! もったいぶらず手早く申せ!!」


 蒼天には余裕がない。

 視線すら条件ではないとなるといつどこから炎のラインが迫ってくるかわからないからだ。


「は、はい。あの攻撃をするのに必要なのは……ヤスヨさんの鞭が一度通っている場所ってことッス!!」

「『は?』」


 泰伯と蒼天は異口同音に驚きの声をあげる。

 もしそれが本当ならば、視線を向けた場所を燃やす、などという能力よりも遥かに厄介だからだ。


「間違いないのかヒタチ!?」

「た、たぶん……。私はずっとヤスヨさんの攻撃見てたんで、どっちの炎もその前に鞭が通った場所だったッス」

「ええい、ならばどうするというのじゃ?」


 このままでは戦いが長引けばそれだけ悌誉が有利になる。対して蒼天たちは目に見えない、そしていつ発動するかもわからない炎を警戒し続けなければならない。

 まるで目に見えない蜘蛛の巣の中で戦えと言われているようなものだ。

 動かなければ鞭の的となる。

 しかし迂闊に動けば炎のラインが予兆なく現れる。

 どうすべきか。それを悩んでいるこの時間さえ惜しい。蒼天が迅速な決断を迫られる中で、しかし泰伯は冷静で――先日、犾治郎に教えられたことを思い返していた。


『泰伯クンはさ、異能の戦いで一番大事なんはなんや思う?』

『そうだな……。何を見ても動じないことかな?』

『それは二つ目やな。一番は、やられる前に敵を倒すこと。切り札とか奥の手とか、そういうのを出す間を与えへんことや。異能の戦いに常識は通用せん。それはつまり、相手の手段に絶対ないが存在せえへんゆうことや』

『なるほど。だからそういう不確かなものを見てから対処しようと考える時点で後手に回ることになる、と』

『そゆこと。せやけどまあこれは難しいな。相手もそんなアホやないし。せやから次の、動じないゆうのが大事になってくるんや』

『冷静になって相手を見ろってことだね?』

『うん。でな、これも異能の戦いやるなら頭にいれといて欲しいんやけどな。どんな力にもなんらかの制約がある』

『制約、か……。あー、例えばこの前の包帯の彼女ならば呪文を唱えなきゃいけないとかかい?』

『そんなとこやな。他にもボクの(ついたち)やと、こいつは剣の先で触れたとこに罠を仕掛ける能力がある。それも、ボクはどこに何を仕掛けたか見えるけど他人からは見えん』

『なんだよそれずるくないかい?』

『うんまあ――ここだけ(・・・・)教えればな(・・・・・)

『……というと?』

『例えば、同時に仕掛けておける罠の数に上限があるとしたら? その数を越えたらそれ以上は罠を仕掛けれんか、最初に仕掛けた罠から消えてくとしたら?』

『そうなのかい?』

『あとは――いくつか罠の種類はあるんやけど、一つの罠を同時に仕掛けとくのにも制限があるとしたら?』

『……仕掛ける時にそれなりに頭を使うよね。最初に聞いたほどの無敵感はないや』

『せやろ。そのあたりの条件を伏せるのがこっちのコツで、それを探るのが異能の戦いの本質や。とはいえ泰伯クンの剣はあんま制約とかわかりやすい特殊能力とかなさそうやけどな』

『まあ……斬撃のリーチを伸ばせるくらいかな?』

『それだけでもええやろ。剣そのもののスペックは高いし、自分の手札の切り方は考えず相手の制約を暴くのだけに頭使えるのは泰伯クン向きや思うで』

『それはそうだね。それで、相手の制約ってのを探るには何に意識を向ければいいんだい?』

『全部』

『は?』

『だから全部や。相手の行動、発動した能力の種別、回数、それが発動した時の相手の状態からすべて。何がどう作用しとるかわからんから拾える情報は全部拾て覚えて検証する。それを戦闘の中でやるんや』

『……すごくレベルの高い話してないかい?』

『うん。せやから――後は体で覚えよか? ボクはひたすら能力使いながら攻めるから頑張って見抜いてな。もちろん、気ぃ抜いたら普通に攻撃してくで』

『……本気?』

『安心してや。峰打ちで勘弁したるからさ』

『峰どこだよ!? 直刀だろそれ!!』


 そうして――ひたすらに追い詰められ、峰打ちという名の、剣の腹で殴打され続けた記憶を思い出していた。

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