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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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free your heat

 悌誉は暫く黙り込んでいた。

 しかしやがて、無言のままに鞭を振るう。

 泰伯は剣を構え、蒼天は再びチャリオットを出して桧楯と共に乗り込んだ。

 悌誉の鞭はいっそう鋭くなり激しさも増している。それでも蒼天はチャリオットを駆って必死に避けていたが――。

 その進路の先を悌誉がキッ、と睨む。

 それがただ敵に向けるものではないと直感で察した蒼天は咄嗟にチャリオットを止めた。

 当然、蒼天と桧楯の体は勢いよく前に投げ出されそうになるが、そんなことなど気にしていられないようなことが起きた。

 二人の視線の先。チャリオットが進むはずだったところに炎が走っているのだ。それは悌誉の術式孫家(そんか)五火之変(ごかのへん)”のような放射状のものではなく、ラインと形容するのが正確なものである。炎は数秒ほどで消えたが、問題はそこではない。

 悌誉は今、何もしていない。ただ蒼天たちのほうを睨んだだけである。


「な、なんスかあの人? まさか見たところを燃やせるような術式まであるんスかね?」

「わからぬがとにかく進路を変えるぞ!! ヒタチは悌誉姉の視線を警戒しておれ!!」


 そう叫んで蒼天はチャリオットを走らせる。

 もし本当に桧楯の言うような能力があるのならば迂闊に近寄ることは出来ない。

 これまでに見せた破荊双策の能力は、伸縮自在の鎖の鞭を操ることだけだった。鞭はどこまでいっても握って操る武器であり、伸ばしすぎれば操作が困難になるので一度収納しなければならないという制約もある。

 術式にしてもそうだ。少なくとも片手は空けておかねばならず悌誉の手元から放たれるという点で軌道の予測自体は可能だった。

 いわばどちらも線の攻撃だ。

 しかしこれは点と点の攻撃である。いつどのように攻撃されるのかほとんど予測がつかない。


「のうヒタチ!! 見るだけでその場所を燃やす、という術式はおぬしの常識的にあり得るか?」

「そりゃまったくナシじゃないッスけど……。でも流石になんか仕掛けはあるはずッスよ? それだけならいくらなんでもデタラメすぎるッス!!」

「仕掛け?」

「そ、そこまではわかんないッスけど、詠唱とか(いん)とか……あとは事前にその場所に札とか記号を――」


 言いながら桧楯は何かに気づいたらしい。

 そしてその時。

 悌誉の意識が蒼天たちに向いていると見た泰伯が悌誉の死角から攻撃を仕掛けようとしていた。それを見た桧楯の顔の色が変わる。


「ヤスタケさん止まって!!」

『ッ!?』


 蒼天の持つ通信札越しに桧楯が叫ぶ。

 それは小柄な桧楯から出たとは思えないほどの鼓膜をつんざくほどの大声だった。

 反射的に泰伯は足を止める。

 それと同時に――泰伯の前に炎のラインが走り、体の前に出ていた左手に触れた。触れた部分から炎は広がっていき肩のところまで広がっていく。

 このままでは全身火だるまになると本能的な危険を察した泰伯は左肩を斬り落とした。

 そして痛みに叫ぶこともなく、肩から流れる血もそのままに大きく下がって悌誉と距離を取った。

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