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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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fire of vengeance_5

 まず火炎放射を桧楯の楯が弾いた。しかしそれとほとんど同じタイミングで二本の鞭の先端についた刃が泰伯に迫っている。

 それらが撃ち落とされた。

 落としたのは蒼天の射た二矢だ。チャリオットの上で、桧楯を投げたと同時に兵士を召還して手綱を任せると自身は、これも能力によって取り出した弩を射て鞭の軌道を変えたのである。

 弩は、つまりは木製のボーガンのような武器だが、弓よりも扱いやすく射程、速度が上回る代わりに装填に力が要るという欠点がある。

 しかし蒼天の宝珠、騎匣獣の能力は『チャリオットとそれに関する武具、兵士を自由に精製、召還できる』というものだ。

 この能力を応用して蒼天は『装填済みの弩』を二つ精製したのである。これならば装填の手間はなく、弓よりも性能の高い飛び道具を連発出来る。

 精製された武器そのものは泰伯の無斬や桧楯の楯のような破格の性能を有しているわけではないが、選択肢の多彩さとそれを瞬時に行える俊敏さが蒼天の強みである。

 加えてもう一つ。


「うむ、ご苦労じゃったヒタチよ」

「あ、ありがとッス蒼天さん」


 火炎放射の驚異がなくなったのを確かめると蒼天はチャリオットを消して前に跳び、桧楯を抱き止めて着地した。これら精製、召還した物の出し入れが自在なのも蒼天の能力の利点である。

 そして――。

 悌誉の足が止まり、鞭が弾き落とされたのを見るや泰伯は構えたままに走り出していた。

 この攻防で出来たのはほんの僅かな隙に過ぎない。しかしその隙を的確に狙えば遠隔斬撃の射程内まで近づくことは可能だ。


(照準……合った!! 届くぞ!!)


 走りながら泰伯は、確実にその視線の先に悌誉を捉えた。今すぐに悌誉が先ほどの術式で駆け出しても当てる自信はある。

 そして悌誉はそうはしなかった。いや、出来なかった。逃げても当てられると悟ったのである。


「“孫家(そんか)幻式(げんしき)無形象水(むけいしょうすい)


 そこで悌誉が取ったのは防御――ではない。

 その術式の名を唱えた途端、悌誉の周囲に霧のようなものがかかった。泰伯から見る悌誉の体は蜃気楼のようにぼやけ、狙いが定めにくくなる。

 剣を振りながら、直前まで悌誉がいた場所を目掛けて狙いを微調整するが自信がない。

 だがここで泰伯も想定していなかったことが起きた。

 遠隔斬撃の刃が霧のかかっているところに触れると、そこを起点に悌誉を覆っていた霧が瞬く間に晴れて悌誉の姿が再びはっきりと見えるようになったのだ。

 理屈はわからない。

 しかし狙うべき場所が定まった以上、泰伯のすべきことは一つだ。

 今の悌誉に身を守る術はない。

 思い切り――無斬を振り下ろす。

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