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BARBAROI -鬼方の戦士は八徳を嗤う-  作者: ペンギンの下僕
chapter2“a*en**r b*ea*s *ein**r*ation”
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fire of vengeance_4

 蒼天はチャリオットを走らせながら、ここだ、と感じた瞬間に合図を出した。

 それは悌誉との距離がこれ以上縮められず、しかし離されることもない絶妙なタイミングである。

 蒼天は先ほど泰伯に言った通りにチャリオットの守りを度外視して悌誉に突撃していった。

 それを見た悌誉は当然、足を止めてでも攻撃してチャリオットを潰そうとする。

 その視界の片隅に泰伯の姿が映る。

 泰伯は走りながら剣を振りかぶっていた。しかし今、泰伯と悌誉の間にはたっぷり二十メートルの開きがあり、泰伯が射程を埋める技を持っていたとしても、


(届きはしない、ハッタリだ!!)


 そう考えた。

 しかし泰伯には躊躇いがなく迷いがない。無論、虚勢を真実に見せようとする時はそれを悟られないようにするのが常だが、頭でそう理解していても悌誉は一抹の疑念を覚えた。

 もしかしたら届くかもしれないと。この一週間で、それを為す技を身に付けたのかもしれないと。

 悩む時間はそうはない。

 そして一度でもその可能性を感じてしまうと、もうそれを無視できない。

 単純で一度しか使えない手段だが、それだけに――たった一回だけならば有効な手段である。

 しかしその上で、悌誉の判断力も並ではない。

 泰伯を無視しないと決めると瞬時に右手の鞭を左手に渡し、左手一本で二本の鞭を操って泰伯を狙いつつ右手を蒼天のチャリオットのほうへと向けた。


孫家(そんか)攻式(こうしき)五火之変(ごかのへん)”」


 この行動を見て蒼天にはまた一つわかったことがある。

 それは悌誉は、少なくとも片手が空いていなければ術式による攻撃を使えないということだ。詠唱は口で行っており手で何かをしている様子はないが、それでも鞭を手から離したのはそういうことだろう。

 最もこれも、厳密には使えないのではなく狙いが定まらないのだろうとも蒼天は思っている。つまり手を標的のほうへ向けることで照準を合わせているのだと。

 しかしそれは今の攻防には関係ない。

 問題なのは泰伯と蒼天、両方を同時に狙うことが悌誉には出来るということだ。


「構うなヤスタケどの、そのまま突っ込め!!」

『了解!!』


 打ち合わせなどしていない。

 しかし泰伯は蒼天に言われるがままに体を動かす。振り上げた剣は遠隔斬撃の動作に入っており、自らを狙う鞭に対処する余裕はない。

 それでも――泰伯に躊躇いはなかった。

 そして蒼天は、


「ヒタチ、頼むぞ!!」


 そう叫んで桧楯の体を抱えると、全速力で進むチャリオットの進行方向目掛けて桧楯を思い切り投げた。


「うりゃぁぁぁぁッッッッ!!!!」


 桧楯もまた疑いなく自らのやるべきこと――術式によって放たれた火炎放射の防御のために投げ飛ばされながら空中で楯を前に構えた。

 防いだとしても着地が危うく、それどころか背後から突き進むチャリオットに撥ねられてしまうだろう。

 そんなことなど(・・・・・・・)一切気にせずに。

 泰伯は、これが自分のやるべきことだと決めたなら迷うことをしないから。

 桧楯は、蒼天のことを信じているから。

 共に、無謀にも思える吶喊に全霊を尽くしているのだ。

 そして――。

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