the defender_2
「ホウジュ……ッスか? 宝の珠であってます?」
蒼天に聞かれた桧楯は首を傾げた。
その困惑は演技には見えない。
「いや、なんでもない。忘れよ。あともう一つよいかの?」
「いいッスけど何スか?」
「おぬしは何か、術式は使えるか?」
そう聞くと桧楯は申し訳なさそうな顔をした。
「すいません、私はそっちはからきしなんスよ。『御楯』の加護で体に『肉体強化』と『反射強化』を付与してるだけッス」
「ふむ、なるほど」
御楯の加護、というのはわからなかったがその後の二つの言葉はそのままの意味で受け取ってよいと蒼天は理解した。
つまりは、身体能力の向上と反射速度の上昇。
それがあるからこそ桧楯はこの戦闘についてこれているのだろう。この細身で大きな楯を平然と振り回せているのだろう。
「謝ることはない。それならそれでまた手を考える。そも、おぬしがいなければ話にならぬ。戦車が要とヤスタケどのは言うたであろう。それはつまり、それを守るおぬしこそが余らの要ということじゃ!!」
蒼天は桧楯に対する気づかいなどなしにそう言った。
「……ああもう、なんでそう人をノせるのが上手いんスかこの人垂らし!!」
「そんなつもりはないぞ、おぬしはもう少し己に自信を持て!!」
「わ、わかったッスよ!! それで、それはそれとしてこっからどうするんスか!?」
そう聞き返されて蒼天は顎に手をやった。
「いっそ、私も降りて走ったほうがいいッスか? 私が攻撃できないのは相手さんにはわかんないでしょうし、的を散らすって意味ならアリなんじゃないッスかね?」
「それは考えないではないが、最後の手段じゃ。あーあー、ヤスタケどの。聞こえておるか?」
そして蒼天は泰伯に渡された通信札に向けて話しかけた。
『こちら泰伯。問題なく聞こえてるよ』
「まだ体力はもちそうかの?」
『なんとかね。だけど流石、こっちの狙いは読まれてるって感じだね。一応、僕にも射程を伸ばす技はあるんだけれどその間合いにははいってくれないや。一度で接近出来る距離にも入れないしね』
手詰まりと感じているのは泰伯も同じのようだ。
「ふむ、ところでその射程技じゃが――確か前に悌誉姉と戦ったと言ったの。その時にその技は見せたのか?」
『見せてはいないよ。だけど、あまり遠くの敵を狙えないというのはバレてるね』
「ふむ。ちなみにそれは……一週間前のことかの?」
『うん、よくわかったね』
「まあなんとなくの』
蒼天はその根拠は曖昧に濁した。
「しかしわかった。なら次に合図をすれば余は防御度外視で最高速度を出すゆえ、それに合わせてその技を出してほしい」
『いいけれど、さっきも言った通り届かないよ』
「うむ、それでよい。故に――一回目が勝負じゃ」
そう言うと蒼天は改めて悌誉のほうを見る。
彼我の距離を計り、タイミングを狙い済ます。
「さあ、行くか!!」