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第38ワン 勇者と再起

─ライハチとの戦いから一夜明けた翌日


 当初の予定では、その日の内に出航する筈であったが、しのぶとジローの負傷を治療する為、一行は街に留まった。その際、ナイーダはショースケにしのぶとジローが異世界から来た者達であること、聖剣に選ばれた勇者である事等を説明した。


 早朝の港をとぼとぼと歩く子供と犬。しのぶとジローである。しのぶが波止場に腰掛けると、ジローもその隣に座る。そして、しのぶは背負っていた輸入りの剣を体の前に持ち替えると、ジローが柄を咥えて引き抜く。


「……」


 改めて、無惨にも折れた聖剣の刃を確認する。以前までは鞘から抜くたびに神々しい輝きを見せた聖剣ヴァーバノワーナだが、今はそこいらの剣と同等、或いはそれにも劣る鉄の塊が如き有様ではないか。


「……深淵に眠る黒鼈、永遠の吹雪で黙らせよ…フリズン」


「……わん(獄炎より飛び立ちし紅禽、その赤き舌にて触れし全てを舐めとうなれ……フラーメ)」


 海に向かって手をかざし、水と火それぞれの魔術を唱えるしのぶとジロー。しのぶの手からは家庭用冷蔵庫で作った氷一個ほどの塊が、ジローの肉球からはピンポン球ほどの火球が飛び出したかと思えば、すぐ下の海面へと落下。火球はジュッと音を立てて消滅。ぼちゃりと着水した水も、やがて溶けて消えた。

 溜息をつく一人と一匹。術の威力が落ちている……それは他ならぬ聖剣から受けていた力が弱まっている証であった。


「……異世界転移して、チート無しで魔王を倒せって…小学生と中型犬には無理ゲーだろ。今度こそ詰んだかな、こりゃ!」


 と、しのぶは冗談混じりに言うが、


「……ナイーダさんやシソーヌ王国の人たち、ショースケさんや日本そっくりだっていうヤマトって国の人たち、まだ知らない国や地域の人たちが、こんな状態のボクらのせいで死んじゃったりするかもしれない」


 ゲームの勇者やなろう系の主人公達は皆、このプレッシャーに耐えていたのだろうか。しのぶは考え、空を仰ぐ。アラパイムの空は、荒川区と同じく青かった。


「シノブ様!ジロー様!」


「こがな所におったんか」


 ふと、ナイーダとショースケが歩いて来るのが見えた。


「ああよかった。シノブ様たち、元の世界へ帰ったんじゃないかと思いましたよ」


 胸を撫で下ろすナイーダに、しのぶは俯いたままの状態で答える。


「帰れないよ……たとえ帰れたとしても、ボクはこのまま帰りたくない!まだ勇者としてこの世界を救ってないし、あのライハチって奴に負けたまま諦められない!」


 始めたゲームはクリアしないと気が済まない、敵キャラは隠しボスに至るまで倒すまでやめられない。それがゲーム好き小学生・大河原忍という人間だ。


「わん!!」


 ジローも吠える。彼は近所に住むグレートデンのベンにもシェパードのジョンにも野良猫やカラスにも果敢に挑んでいった。結果的に勝とうが負けようが、何度も挑む。彼は“負けず嫌い”なのだ。


「よう言うたな、しのぶ」


 ショースケはしのぶとジローの間に割って入るように屈むと、折れた聖剣の刃をまじまじと眺めた。


「剣が折れたなら、それを鍛え直すのが鍛冶屋の仕事じゃろ」


「まさか、ショースケさん……」


 ショースケは立ち上がる。


「そいつはワシが直しちゃる!神が造った剣だか何だか知らんが、ワシのオジイが作った剣に負けたんならソレは神じゃのうても、人の手でも壊せるし直せるゆうことじゃろう!!」


 半ばメチャクチャな理論だが、しのぶにとっては頼もしく感じられた。


「っちゅうわけでしのぶ、ワシもお前らの旅に付き合わしてくれ。そんでお前もワシの“最強の鍛冶屋になる”夢に付き合うてくれんかいや」


 ショースケの差し出した手をしのぶは握り返し、立ち上がる。


「いいの?ショースケさん」


「“さん”付けは要らん。ワシらはもう仲間じゃろう」


「……よろしく、ショースケ!」



   錬術師ショースケが仲間に加わった

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