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第2ワン 勇者と荒川

─東京都荒川区


 季節は春。荒川の河川敷は芽吹いた草木と萌ゆる花で溢れ、散歩やスポーツに興じる人々の姿で賑わう。


「よし、ジロー!コレが飛んでったら走って追い付いて空中でキャッチするんだ!!」

「ワンッ」


 少年とも少女とも取れる見た目の小学生が飼い犬に命じ、プラスチック製の円盤・フリスビーを投げる。そして回転しながら宙を舞う円盤を、犬は微動だにせず見送った。


「……行けよ!!」


 子供の名はしのぶ。フルネームは大河原忍おおがわら しのぶ。荒川区立町屋小学校に通う普通の小学五年生だ。そして白地に黒い斑柄の片耳が垂れた犬の名はジロー。四国犬とボーダーコリーの雑種犬で雄の四歳。


「やっぱり、いきなりは上手くいかないか……いや、お前の場合は何やっても上手くいかないだろうね」


 しのぶは投げたフリスビーを拾いに歩いてゆく。昨晩テレビで見たディスクドッグというスポーツを試してみたくなり、飼い犬のジローを伴って河川敷まで来たのだがそもそもジローは何に対してもやる気を見せない犬だったのだ。


「ほらジロー、散歩はおしまい。帰るよ」


 フリスビーを手提げ袋に収め、代わりに取り出したリードをジローの首輪に付けようとしたその時だった。突然ジローは川の方へと走り出した。


「どこ行くんだよジロー!?」


 しのぶが追い付くと、荒川を流れる発泡スチロール箱が目に飛び込んだ。そして、その中には子猫が一匹にゃあにゃあと泣きながら助けを求めている。


「猫が!……今助けるぞ!!」


 しのぶとジローは川に飛び込んでいた。幸にして溺れる程の深さではないものの、流れがあり、着衣のままのしのぶには少し動きづらかった。


 箱に追い付いたしのぶとジローは、ひとまず子猫を岸に上げる。そして、自らも岸に手を掛けようとしたその時だった。


「!?うわぁぁぁぁ!??」


 しのぶとジローは、突如として川底へと吸い込まれていった。



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