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第12ワン 勇者と戦闘

─シソーヌ王国城下街外、レ・モンサン平原


 モンスター達の襲来を、しのぶ達は街の外で迎え撃つ。最前列には重装歩兵・騎兵、そして戦士の冒険者たち。その後方に弓や猟銃を構えた兵と冒険者たち、更に奥で術士達が援護し、しのぶやハッセ、女王達はその後ろで指揮するという布陣である。


「基本にして攻守のバランス面で最適な陣形……シノブ殿は元の世界で兵法を学ばれたのですかな?」


 甲冑姿のハッセに問われるしのぶだが、戦略シミュレーションゲームの受け売りだとは言えないし、言っても通じない。


「ほんとにジローがめちゃくちゃ強いチート勇者なら、『雷神シド』や『鉄壁かけたマジンガー』みたいに敵陣のど真ん中に突入させてもいいんだけど、ボクらは初めての戦闘なんだ。慎重にいかないと……」


 そうこうしている間に、モンスターの大群は着実に王国へと迫っていた。


「モンスターの群れにしては統率が取れている……しかも種族がバラバラなのに協力し合っているだと?まさか敵に凄腕の駈士ハンドラーがいるのか……?」


 ハッセは分析する。只人サピエントや、エルフ・ドワーフらが力で勝る獣やモンスター達に勝てるのは、知力による差が大きい。ハンドラーという生業クラスは獣やモンスターを使役する能力を持つが、強大かつ多数のそれを従えるハンドラーというのは少なくとも人の中にはいないと言われる。

 魔物の群れが距離にして数百メートルといった地点で停止すると、群れの中から体高5メートルはあろうかというキマイラが先頭へと歩み出る。でかい。 これだけ離れていても解る。近所を散歩していると出会うグレートデンの『ベン』よりも、上野動物園で見たライオンや クマより遙かにでかい。ジローとしのぶは思った。


「シソーヌ王国の人間達よ、我らは魔王軍魔獣隊! そして私が隊長にして魔王軍四天王が一人魔獣遣いタモンである!」


 キマイラの背に騎乗しながら、魔導拡声器を通してタモンが名乗る。その名を聞き兵士や冒険者達の間にどよめきが起こった。魔王軍四天王の名は知らぬ者がいないほどアラパイム中に轟いている。


「今すぐ勇者と聖剣を我が元へ差し出せば、貴国への危害は加えない。賢明な判断をせよ」


 続けるタモンの要求に、女王も魔導拡声器を手にする。


「シソーヌ王国女王ミクリヤ26世の名において返答します。答えはいな!我々は勇者も聖剣も、国も民もアラパイムの未来も貴方達に渡す気はありません!!」


 毅然たる態度で女王は言い放った。


「交渉は決裂ですか……いいでしょう、人間どもに愚行を後悔させてあげなさい!モンスターどもよ、 喰らい尽くせ!!勇者と思われる者のみ生かして捕らえよ!!」


 タモンの号令でモンスター達は再び進軍を始める。


「総員、王国と勇者様を守りなさい!!」


 シソーヌ王国軍は女王の命令によりモンスター達を迎え撃つ。 しのぶは、重装兵達とゴブリンやトロール、コボルトといったモンスター達が交戦を開始したのを目にしながら、聖剣の鞘を抱く。


「ぼ、ボクらも戦わなきゃ……」


 しかし、 しのぶの体は震え、ジローも尻尾を腹側にまで垂らしているのだ。


「シノブ殿、如何に貴方がたが伝説の勇者といえども戦の経験は無いと聞いております。前に出てはなりませぬ。貴方と聖剣をお守りするのも我らの使命ですぞ」


 しのぶを止めるハッセ。 勇者云々を抜きにしても子供と愛玩犬に戦場は場違いである。出来ることなら彼らを危険には晒したくないというのが大人達の考えである。が、その時だった。


「見ツケタゾ!聖剣ダ!!」


「トイウコトハ、アノガキガ勇者カ!!」


 前衛で戦う兵達の上空を越え、二体のフライングデビルがしのぶ達の数十メートル先の空に羽ばたいていた。


「くそ!モンスターは地形を選ばないという事か!皆の者、シノブ殿とジロー殿を守れ!」


 親衛騎士達が盾を構えてしのぶとジローの前に立ち塞がるが、ジローはと地面の間をするりと抜け、後ろ脚二本で立つ。


「ウゥ~~…ワン!! (訳: 煉獄より飛び立ちし紅禽、赤き舌にて全てを舐めとうなれ……フラーメ!!」


 二本足で立つジローの前脚左右から6発ずつ、肉球の数だけバレーボール大の大球が飛び出し、フライングデビル達に直撃する。


「ギャーッ!!」 「ぶべら!?」


 黒こげになった二体の魔物は落下しながら灰となって消滅した。 その光景を見て王国軍も魔王軍も時が停止した様に言葉を失う。


「じ、ジローが魔術を……?」


「わんっ!」


 止まった時と失った言葉を最初に取り戻したのは、しのぶであった。

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