九話俺、窮地?
「はーっはっはっはっ!!」
悪役みたいな高笑いをするミルロウを前に俺は顔を引き攣らせた。
こんな時どうしたらいいのかわからないのは俺が陰キャだからか?
陽キャなら分かるのか?
急募、初対面のヤツが目の前でいきなり悪役笑いし始めた時の対処法。
すると、リーラがたったったとミルロウの横に駆けていった。
アンサーが見れるのか?
「「はーはっはっは!!」」
急募、悪役が2人に増えた時の対処法。
「おーい2人共。シンが困ってるからそこら辺にしろよ」
「おっと。それは悪いことをした。ところで何か用か? まああっても留守を任されているからここを離れられないのだが…」
「そうなの? んー…。あ! じゃあここで遊ぼうよ!」
流石に教会で遊ぶのは罰当たりなんじゃ…。
「おー! 名案だな! それなら僕はここにいたまま君達と遊べる!」
神父の息子が言うならもういーや。
『では、何をしますか?』
「それじゃあ鬼ごっこ!!」
「りょーかーい。皆もいいか?」
ガロの問に俺達は頷いた。
「やったー!! それじゃあ…じゃーんけーんーー」
じゃんけんの結果ジリが鬼になった。
『10、9,8ーー』
いや、こいつ鬼できるの?
『5、4、3ーー』
ふわふわ浮いてるだけだろ?
これは楽勝だな。
『0』
瞬間、ジリがとんでもない速度で突っ込んできた。
「ちょっ!? まってまってまっーーぐふっ!!?」
そして俺の顔面にクリーンヒットした。
「〜~っ! いってぇな!! 何しやがる!!」
『すみません。わざとです』
「謝る気ないだろ!!」
『「これは楽勝だな」ってナメた顔をしていたのでつい』
こいつエスパーか!?
『それより次の鬼は貴方ですよ』
ジリはふらーっと俺から逃げていった。
くっそぅ!
俺から1番近いのはーー
「シンー!! こっちだよー!!」
…リーラはパスで。
あいつを捕まえられる気がしない。
次に近いのはーーガロだな。
俺はガロに向かって走りだす。
「おー? おれ狙いか」
ガロは逃げることもせずのんびりとしている。
いける!!
俺はガロに向かって手を伸ばす。
手が触れるーーその瞬間、ガロの姿がフッと消えた。
「えっ?」
「こっちだよ」
すぐ後ろでガロの声が聞こえた。
俺は後ろに腕を振り回した。
ーーがまたガロが消える。
「こっちだって」
また後ろで声が聞こえる。
手を振り回す。
消える。
声。
振り回す、消える、声。
振り回す消える声振り回す消える声。
ぜんっぜん捕まらない。
触れる直前でガロは消えてしまう。
リーラみたいな力任せの動きとは違う。
それはまるで流れるような自然な身のこなしだった。
「お前…リーラとルーカスさんのこと言えないじゃねーか」
「いや、あの3人みたいな身体能力はないってば」
「ん? 3人?」
周りを見回してーーは??
「はーはっはっは!!」
ミルロウはバカみたいに速い動きで縦横無尽に教会内を跳び回っていた。
…もしかして俺化け物の巣窟に放り込まれた?
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