八話俺、紹介される?
「シンー!! お兄ちゃんー!! こっちこっち!!」
リーラが振り返りながら村の丘を登っていく。
『住む場所が見つかってよかったです。貴方は鈍臭いですが運は良い方みたいですね』
俺の少し先を行くジリが悪態を突く。
「お前はいつも一言多いんだよ」
『すみません、根が正直なもので』
悪びれる様子のないジリに思わずため息が漏れた。
「お前ら仲いいなー」
隣のガロが呑気に言った。
「ガロ、目悪かったのか? 眼鏡した方がいいぞ」
『珍しく同意見ですね』
「ほら、仲良しじゃん。つーかジリもだけどシンも意外と辛辣だよな。猫被ってた?」
「いや、爽やかコミュ強お兄さんだと思って身構えてただけ。実際はテキトー外道お兄さんだったから緊張も遠慮も吹き飛んだ」
「外道は言い過ぎじゃね?」
「そんなことないっ! 今朝は本当に死んだと思ったんだからな!!」
「それなー」
「それなー、じゃねえよ!! そういうとこだって!!」
そんなことを言い合いながら丘を登っていくとやがてどこか潔癖な雰囲気を纏った白い塔のような建物に着いた。
「ここは?」
「教会だよ」
「うん! あとミルロウのおうちー!!」
『ご友人ですか?』
「そうそう。神父さんの一人息子、リーラと同い年」
神父の息子かぁ。
やっぱり清廉潔白な聖人なんだろうか?
「ミルロウー!! 遊びに来たよー!!」
リーラが教会の大きな扉を開け放つ。
中には長椅子が左右に六脚ずつ、そして正面奥にはどこか見覚えのあるような等身大の女性の石像があった。
そして、その石像の前に白く長い髪を後ろで結んだ神父服の少年が立っていた。
ステンドグラスから差し込む光が線の細い中性的な顔を照らし出す。
その光景は神聖な雰囲気に満ちてーー
「はーっはっはっはっ!! よくぞ来た我が友リーラ!! そしてガロよ!! この僕っ!! ミルロウ・シルベニスに何か用か!!」
いると思ったのは気のせいだったようだ。
何か両手を広げて高笑いするヤベーヤツがいた。
「うん! 新しい友達を連れて来たんだ。シンとジリだよ!」
「よろ…しく」
『よろしくお願いします』
俺は引き攣った顔で挨拶した。
言葉に詰まったのはコミュ障のせいではない。
あまりのギャップに面食らったせいだ。
「おー!! 喋る魔具とは珍しい!! こちらこそよろしく頼むぞ! 2人とも!」
そう言ってミルロウはまた高笑いした。
読んで頂きありがとうございます。
昨日アブに追いかけられました。
めっちゃ怖かったです。