七話俺、家なし?
「帰ったぞー!!」
「ただいまー!!」
「戻り…まし…た」
元気に言うルーカスさんとリーラに続いて俺は倒れ込むように扉をくぐった。
あの後2人の『たたかいごっこ』に付き合った俺は朝から疲労困憊だ。
一発でも喰らったらアウトだと思ったらこの上なく集中できた。
火事場の馬鹿力って本当にあるんだな…。
あれを防ぎきったのは奇跡としか言えない…。
「ごはん…できてる…よ?」
「おう。いつもありがとな」
ルーカスさんの言葉に頬を染めながら目を伏せるタニアさん。
その表情はどこか嬉しそうだ。
「ごはんー!!」
リーラがテーブルに駆けていく。
俺もノロノロとそれに続く。
「よぉ、シン。おつかれさん。少しやつれた?」
先に席についていたガロが言った。
「誰のせいだと…」
「まあまあ、何事も経験って言うしさ」
「この経験、意味あったか?」
「さあ?」
こいつテキトーなことしか言ってねぇ…。
軽口もそこそこに料理に手をつける。
そして、一通り食べ終わったころルーカスさんが口を開いた。
「シン達は行き先とかは決まっているのか?」
行き先…。
気づいたら森の中に放りこまれていたのだから行き先どころかここがどこなのかもよくわかっていない。
『私達は気づいたらあの森にいたので正直行き先などは決まっていません』
「ん? そうなのか? もしかして記憶喪失とかそういう話か?」
「あ…いや。俺達はーー」
ーー本当のことを言ってしまっていいのか?
その疑念が俺の言葉を詰まらせた。
「あ! そういえばシン達、魔具のことも知らなかったよ!」
リーラの声が俺の言葉を遮る。
「そうなのか? まあ、生活してりゃ触れるもんだ。知らないなんてありえないしなぁ…」
ルーカスさんは腕を組んで考え込む。
やがて決心したように「よし!」と言った。
「お前らうちに住め!」
『「え?」』
「タニア、ガロ、リーラ、いいか?」
「う、うん…。シンくん、何度も手伝おうとしてくれた…、いい子。慣れるまでは…その…ごめんなさいだけどよろしくね」
タニアさんが遠慮がちに言った。
「おう。シン達面白そうだしおれはいいぜー」
ガロは「よろしくなー」と軽く笑っている。
「うん!! あたしもっとシンと遊びたいもん!!」
リーラは満面の笑みで俺の手を握ると会ったときと同じようにブンブンと腕を振った。
いや、何か決まりかけてるけどこれからもお世話になるのは流石にーー
「因みに断るなら殴ってでもーー」
『「お世話になります!!」』
「ガッハッハ!! これからよろしくな!!」
リビングにルーカスさんの豪快な笑い声が響いた。
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