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六話俺、後悔する?

「シンー!! 朝だよー!!」


 下からリーラの声が聞こえる。


「ジリ、聞こえたか?」

『ええ』


 俺達はベッドから降りてリビングへと向かった。

 結局昨日は泣くだけ泣いた後、屋根裏の部屋に泊めてもらった。

 誰も泣いた理由は聞かなかった。

 本当に優しい人達だと思った。

 リビングに向かうとタニアさんが丁度朝食を作っているところだった。

 ここまでしてもらって何もしないのは流石に申し訳ない。

 俺は朝食の準備を手伝おうとタニアさんに話しかけた。


「あの…何かてつだーー」


「ひっ!?」


『「っ!?」』


 消えた!?

 たった今まで目の前にいたはずのタニアさんの姿が突然かき消えた。

 え!?

 どこだ!?


『慎太郎、上を見てください』


 ジリの声に上を見上げる。

 するとまるで忍者のごとく天井に張り付くタニアさんが…。


「あの…まだ慣れなくて…ごめんなさい」


『…慎太郎? もしかして人間は皆平均的にこのような身体能力を持っているのですか? それともアーツ家の人々がおかしいだけですか?』


「皆こうな訳ないーーって言いたいところだけど異世界の平均が分からん…」


 仮に平均がこれだとしたら俺達はこの世界を生きていけるのか?

 割とシャレにならない問題な気がする。


 その後も何度か手伝おうとしたがその度にタニアさんが忍者になってしまうので大人しく座って待つことにした。


 あれ? そう言えばリーラはどこだろ?

 リビングには俺達を呼んだリーラの姿が見当たらない。


「お? 2人とも早いな」


 ガロが目を擦りながらリビングに入ってきた。


「お…おはよう」

『おはようございます。ガロ』


「はい、おはようさん」


『ところでリーラはどこでしょうか? 先に起きていた筈なのに姿が見当たりませんが?』


 どうやらジリも気になったらしい。


「ああ、リーラなら多分親父と庭にいるよ。見に行く?」


 それに俺とジリは頷いた。

 もし、仕事とかをしているなら俺も手伝えるかもしれない。

 ガロについて俺達は裏手の庭に出た。

 その光景を見て俺とジリは啞然とした。


「ふっ! はっ!」


「ガッハッハ!! 勢いがいいな!」


 そこには凄まじい速度で木剣を振り回すリーラとそれを笑顔で軽く捌くルーカスさんの姿があった。


「…何してんの? あれ?」


「お! やっと普通に話してくれた」


 そう言ってガロは笑った。

 いや、びっくりし過ぎて緊張を忘れただけだ。


「『たたかいごっこ』らしいよ?」 


 どっかの戦闘民族か!


「おれにはそんなかわいいもんには見えないけど。まあ、脳筋に常識は通じないからさ。肝心なのは諦めと何でも受け入れる気の持ちような」


 ガロはどこか遠い目をしながらそう言った。

 過去に辛いことでもあったのだろうか?

 そっとしておこう。


『しかし、何でしょう…。ガロの言葉にどこか安心している私がいます』


「それな」


 あんなびっくり人間ばかりの世界だったらどうしようと思っていたから少し安心した。

 やっぱりあの人達、異世界人から見てもおかしいんだな…。


「あ! おにーちゃーん!! それにシンとジリ! おはよー!!」


 こちらに気づいたリーラがそう言いながらこちらに走ってきた。


「どうしたの? もしかしてお兄ちゃん達も遊んでくれるの!?」


 リーラがキラキラとした目でこちらを見る。

 こ、断りづれぇ…。


『スリープモードに移行します』


 そう言ってジリはパタンと地面に落ちた。


「あれ? ジリどうしたの? まだ眠かった?」


 こいつ逃げやがった!

 都合のいいときだけ普通のスマホのフリしやがって!!


「あ、おれは母さん手伝ってくるから」


 ガロはそう言ってそそくさと家に入っていった。

 ガロ!?

 信じていたのに!?


「そっか…。シンは?」


 そう言って不安そうにこちらを見上げるリーラ。

 イヤって言わなきゃイヤって言わなきゃイヤって言わなきゃ!


「やっぱりだめ…かな? 最近お父さんしか遊んでくれないんだ」


 しゅんとするリーラ。

 ……ちょっと可哀想…いや、だめだめだめ!!

 巻き込まれたら下手すりゃ死ぬって!!

 イヤって言わなきゃイヤって言わなきゃイヤって言わなきゃ!


「…うん!大丈夫だよ!ただ…また今度遊んでくれたら嬉しいな」


 リーラはそう言って寂しそうに笑った。

 ……いや、それでもイヤって言わなきゃ!

 さあ見ていろ! 

 俺はいざという時にはNOと言える日本人だからな!


「……イイヨ」

「本当!? やったー!!」


 くっそぅ!!

 覚えてろよ2人とも!!


 その後激しく後悔することになったのは言うまでもない。








読んで頂きありがとうございます

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