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第五話俺、気づいた?

投稿遅れてすみません。

寝坊しました。

少女ーーリーラが手を差し出す。

俺は恐る恐る手を伸ばした。

握りつぶされないよな?


「よろしくー!!」


リーラは俺の手を掴むとブンブンと腕を振った。


「上手くやれそうでよかった! んじゃ、オレはシン達のこと伝えてくるからそこら辺で遊んでてくれ」


ルーカスさんはそう言って歩いて行った。


「だって! 何して遊ぶ? えーっと…」


『私はジリ、こっちが小宮 慎太郎です』


「喋った!! 何これ何これ!」


リーラは興味津々の目でぐるぐるとジリの周りを回った。

そして、彼女は俺に笑顔で言った。


「すごいね!! この喋る板!!」


『んなっ!?』


リーラは無邪気に地雷を踏み抜いた。


『しゃ、喋る板…? 唯一無二の私が喋る板?』


ジリは2度目の喋る板発言に塞ぎ込んでいる。


「あれ? 何か悪いことしちゃったかな? えっとーーコネ…ヤシン…ト…あーー!!!」


俺の名前が言いにくいのかリーラはもどかしそうに短い金髪の頭をがしがしと両手で掻いた。


「えーと…シン!! 言いにくいからシンって呼ぶね!!」


「あ…ああ」


同じ反応をする辺り似たもの親子だなぁ。


「それでシン? ジリは平気?」


リーラが指差した先ではジリが地に伏していた。


『どーせ私は何もできませんとも、あーそーですとも…』


ダメージは大きそうだ。


「だい…じょうぶ」


「ホントに!? 全然動かないけどホントに大丈夫!?」


「あいつの趣味…なんだ」


「そうなの!?」


フッフッフ。

さっきまでの仕返しだ。

めちゃくちゃ緊張したけど言ってやったぞ!!

ーーって何か俺、めちゃくちゃ小物じゃないか……。


「あれ!? シンまで寝ちゃった!? もしかしてこういう遊び? あたしもするー!!」


リーラは地面に寝そべった。


「おーい! 親父が呼んでんぞー! って何やってんだ?」


「わかんない!!」


ツンツンとした金髪の少年の呼びかけにリーラはがばっ!と勢い良く起き上がった。

それに釣られるように俺とジリものそのそと起き上がる。


「えーっと、そっちが親父の連れてきたお客さんでいいんだよな?」


「うん!! こっちがシンで浮いてるのがジリだよ!」


「そっか。おれの名前はガロ、リーラの兄だ。よろしくな。シン、ジリ」


ノッポの少年ーーガロはそう言って笑った。


「よろしく…」


『よろしくお願いします』


「おおー! 親父が言ってたけど本当に喋るんだな! スゲェ!! ーーっと忘れるとこだった。2人も来てくれるか? もうすぐ飯ができるからさ」


ガロは「こっちな」っと行って歩き出した。

何だろう。

異世界人って皆コミュ強なのか?

羨ましい。

ガロに着いて木造の家がいくつも並ぶ道を進んで行く。

途中、牛とブタを合わせたような動物とすれ違った。

この世界の家畜だろうか?


「ブウを見たことないのか?」


不思議そうな目でそれを見ているとガロが聞いてきた。


「ブウ?」


「ああ。まあ家畜だな。二人とも食べたことない?」


「…ない」


『私は食事をしないので』


「ああ、ジリは魔具だもんな。んじゃシンは今度一緒に食おうぜ。ブウの肉は美味いんだ」


『ところでマグとはなんでしょうか? ルーカスさんも私のことをそう言っていましたが』


「「えっ!? 知らないの!?」」


ガロとリーラの声が重なった。


「マジか!? えっと魔具っていうのは魔力を使って動く物のことだな。例えばーーあれとか!」


そう言ってガロは花壇に立つ女性を指した。

女性の手には小さな筒状のものが握られていた。

するとその筒が突然淡く輝き出し勢い良く水が吹き出た。


「魔力…!」


やっぱりあるんだ!

流石異世界!


『なるほど。魔力を原動力とした物の総称ですか。それなら確かに私も魔具ですね』


「え!?」


こいつ魔力で動いてたの!?


『言ってませんでしたね。夜は魔力の補充を忘れないで下さいね』


「それにしても魔具を知らない人なんてあたし初めて見た! シン達はどこから来たの?」


「っ!?」


何て言えばいいんだろう?

正直に言うのは不味いか?

でも隠し事をするのも悪いし…。


「まぁいいじゃん。ほら、着いたぞ。ここがおれ達の家だ」


返答に困っているとガロが助け船を出してくれた。

良い人過ぎる…!


ルーカスさんの家は木造の2階建てだった。

中世とかファンタジーとかに出てくるようなどこか懐かしさを覚えるような建物だ。


「「ただいまー」」


ガロとリーラに続いて扉をくぐると食欲をそそる暖かな匂いが香った。


「おかえり!! さあ、飯にしよう!!っとタニア? いつまで隠れてるんだ?」


ルーカスさんがそう言って振り返る。

見れば柱の影から長い金色の髪の女性が顔だけ出してこちらを伺っている。

線の細い気弱そうな女性だ。

恐らくルーカスさんの奥さんだ。


「あなた…やっぱり、緊張して…」


「大丈夫だ!! 二人とも面白いぞ? 怖くないから出てこい」


ルーカスさんは屈んでチッチッチ、と手を出しながら女性を呼んだ。


犬じゃあるまいし…。


しかし、効果はあったようで女性が恐る恐る現れた。


「タニア…です。ごめんなさい。あなた達を嫌ってる訳じゃ…ないの。私、極度の人見し…ーーやっぱりだめっ!」


と、タニアさんは自己紹介の途中で耐えきれずにまた柱の影に隠れてしまった。


何だろう。

すごく親近感を覚える。


「わりぃな。シン、ジリ。だけど本人の言うとおり嫌ってるわけじゃねぇんだ。まあ、そのうち慣れるさ。とにかく飯にしよう」


そう言ってルーカスさんはリビングに案内してくれた。

大きなテーブルには様々な料理が所狭しと並んでいる。

どれも美味しそうだ。

俺達は席に着いた。


「それじゃあ、いただきます」


「「「いただきます」」」


ルーカスの声に続いてタニアさん、リーラ、ガロの声。

俺も「いただきます」と言って食事に手をつける。

ジリは俺の横で大人しくしていた。


「どうだシン? 美味いか?」


「はい…美味しい…です。」


「そうでしょ! お母さんの料理は美味しいんだから!」


並んでいるのは見たことない料理だったがどれもとても美味しかった。

皆が楽しそうに食卓を囲む姿にどこか懐かしさを覚えた。


「シン!? どうしたの!?」


リーラが突然驚いた声を上げた。

え? 

俺の顔に何か…。

そこで自分の手に水滴が落ちた。

これはーー涙?

そうか。

俺はきっとこの光景に母さんと父さんの姿を重ねていたんだ。

そしてもう2人には会えないというそんな当たり前のことにやっと気づいた。

分かっているつもりだった。

けど俺は死んだけど『生きている』から実感がなかった。

でも今、やっと本当の意味で理解した。

あの瞬間がどれだけ幸せだったのか。

どれだけ大切だったのか。


「ねえ! シン、だいじょーー」


「リーラ」


ルーカスさんがリーラを手で制す。


「泣かせてやれ」


ルーカスさん達は泣きじゃくる俺をただ見守っていた。






読んで頂きありがとうございます

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