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四話俺、拾われた?

「大丈夫かー、坊主」


 目の前の大男は俺の背よりもデカい斧を片手で軽々と持ちながらこちらを振り返る。


「え…あ…」


 目まぐるしく変わる状況に頭が追いつかない。

 男は屈んで俺の身体をざっと確認すると「うん

 」と頷いて立ち上がった。


「怪我は…なさそうだな。ちょっと離れててもらえるか?」


 そう言って男はこちらに背を向けると斧を構える。

 俺は言われた通り男から距離を取る。、

 男の目線の先を見ると吹き飛ばされた灰色の熊のような獣が起き上がるところだった。


「アーマーベアか…。今夜はご馳走だな」


 男はツイてると言わんばかりの表情。

 そして獣ーーアーマーベアが男に向かって飛びかかった。

 その巨躯からは想像できないほどの跳躍。

 10メートルはあろうかという距離を一足で詰める。

 鋭い爪が男に振り下ろされる。

 だが男は大斧を持っているとは思えない軽やかなバックステップでそれを躱す。

 アーマーベアの攻撃が空を切る。

 そして、男はその隙を見逃さなかった。

 斧を大上段に構えアーマーベアの脳天に叩き落とす。

 その攻撃は硬そうな皮膚を容易く突き破りアーマーベアを地面に叩きつける。

 その凄まじい衝撃に一帯が揺れる。

 アーマーベアは倒れ伏したまま動かない。


「よし。坊主ー! もう来ていいぞー!」


 俺は恐る恐る男に近づく。


「あり…がとうございます」


「なぁに気にすんな。いやー、災難だったな…ってその浮いてんの何だ?」


 男はそう言ってジリを指差した。

 あ、そう言えばこいつのこと忘れてた。


『助けて頂きありがとうございます。私はジリと言います。私のことをすっかり忘れていたこちらの間抜け面は小宮こみや 慎太郎しんたろうです』


「うおっ! 喋った!! 面白い魔具まぐだな。わかった。ジリとコメ…ヤ…シン…テル…、あー言いづらいな! わりぃが『シン』て呼んでいいか?」


 あ、あだ名!!

 生まれて始めてのあだ名だ!

 俺はブンブンと首を縦に振った。

 まだ直接話す勇気はないからな!!

 あと、ジリにはあとで文句言ってやる。


「おーおー。そんなに振ったら首が取れちまうぞ?」


 そう言って男は「ガハハ」と豪快に笑った。


「んじゃ次はオレの番だな。オレはルーカス・アーツこの先の村で鍛冶屋をやってる。アンタら見たところ旅人っつうよりは迷子っぽいな。子どもだけでこの森歩くのは危ねえぞ? 行くとこないならウチ来るか? いや、来い!」


 ルーカスさんはそう言って笑顔でグッとサムズアップした。

 うーん…。

 泊めてくれるのは有り難いけど流石に迷惑じゃないだろうか?

 安全なところまで連れて行ってもらってそこで別れるのが無難な気がーー


「因みに断ったら殴ってでも連れて行く!!」


「よろしくお願いします」


 あの怪力で殴られたらシャレにならん…。


「そうかそうか! ガッハッハ! んじゃあオレについてこい」


 ルーカスさんはアーマーベアの亡骸を担いで歩き出す。

 そうして暫く森を歩くと遠くに木造の家がポツポツと見えてきた。


「あそこがオレの住んでる村だ」


 ルーカスさんがそう言って指差した。

 その入口をよく見るとちょこん、と金色の髪の女の子が座っていた。

 歳は俺と同じくらいか?

 と、少女はぐるんと綺麗な青い目をこちらに向けると笑顔を浮かべながら凄い勢いでこちらに駆けてきた。


「おとーさーん!!」


「おー!! リーラ!! 帰ったぞー!!」


 少女は笑顔でルーカスさんの胸に飛び込む。

 瞬間ーーアーマーベアをかついだルーカスさんがとんでもない速度で後ろに吹っ飛んでいった。


『「は?」』


 俺とジリは唖然とした。


「ガッハッハ!! 相変わらず元気だな!!」


「えへへ…うん!!」


 いや、えへへ…じゃないが?

 あの子、もしかしてルーカスさんと同じくらい怪力なんじゃ?


『人体の不思議ですね…』


「あれ不思議で済ましていいの?」


 やがてルーカスさんは起き上がって女の子と一緒にこちらにやってくる。


「紹介する。こいつが娘のリーラだ。よろしくな」


「よろしくな!!」


 女の子ーーリーラはルーカスさんの言葉を繰り返すと屈託のない笑みでぱっと開いた手を差し出した。



読んで頂きありがとうございます。

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