三話俺、遭難?
スマホが喋った!?
突然の出来事に固まる。
『早く拾ってくれません?』
これ触っていいのか?
何か呪いのアイテムとかそういうのじゃない?
怪しすぎる
俺が不審そうに様子を伺っているとスマホはため息らしきものを吐いた。
『全く…手のかかる人ですね』
そう言うとスマホは淡い光を放ちながらふわっと浮かび上がった。
「うおっ!?」
その場から飛び退る。
『まあ、そんなに警戒しないで下さい。私はノエル様によって生み出された存在。そうですね…音声検索AIを元に生み出されたのでそのまま『Ziri』と呼んで下さい』
「あ、そうなんだ」
なるほど。
これがノエルさんが言ってた『手助け』なのか?
こんな口の悪いやつが?
『今、失礼なことを考えましたね?』
「え! もしかしてお前も心読めるの!?」
『いいえ、ただ貴方がわかり易過ぎるだけです。そんなことよりもこの状況をどうにかする方が大事だと思いますが』
「そう言われてもな…。あ! 『手助け』ってくらいだから何か便利機能とかないのか?」
ジリはどこか得意気に身体?を反らすと自信に満ちた声で話し始めた。
『それはもちろんありますとも!! 何せ私は神の手によって生み出された唯一無二の存在なのですから!』
おお!!
やっぱり!!
チートはなしとか言いながらこんなことをしてくれるとは!!
ここから俺の異世界ライフが始まるのか!
『なんと!! L○NEができます!!』
ん?
「それって普通のスマホと変わらなくない?」
『何を言いますか!! Wi-Fiも電波もない世界でL○NEができるんですよ!? これを神の御業と言わず何というのです?』
んー…、まあ連絡手段があるっていうのは良いかも?
「あ! それじゃあ公式アカウントでも何でもいいから誰かに連絡取ってよ!」
『出来ませんけど?』
「へ? 何で?」
『言ったでしょう? 唯一無二の存在だと。 私のような奇跡の存在が他に存在するとでも?』
つまり機能はあっても相手がいないってこと?
それって意味がないんじゃ…。
『ですが安心して下さい! 私の機能はこれだけではありません!!』
「おお!!」
そうだよな!
それだけな訳ないよな!
全く勿体振らないでくれよー。
『なんとTw○tterもできます!!』
ん?
「…因みに相手は?」
『他に私のような存在がいるとでも? ですがまだまだ機能はあります!!』
もしかしてこいつ…。
「他には?」
『イ○スタグラムができます!』
「相手は?」
『いるとでも?』
「なるほど…」
要するにコイツ…。
「役立たずじゃねーか!!」
『なっ!? 何てことを言うんです!』
「うるせぇ!! 要は機能はあっても何もできねぇってことだろ!? お前喋るだけの板じゃねえか! どうすんだよ!? このままだと俺達ただの遭難者だぞ!?」
『しゃ、喋る板…、言うに事欠いて喋る板…。ふ、ふふふ…。良いでしょう。ではさらなる機能をお見せしましょう』
そう言って、ジリは俺の眼前に来ると見覚えのある画面を開いた。
これはーー
「ネット検索?」
『そうです! さあ! これでマップを検索するのです!』
おお!!
地味だけどこれは使える!
「なんだ! やるじゃん!! んじゃ早速現在地はっとーーん?」
『どうしました?』
「なあ…検索結果が0件なんだけど」
『…あっ』
「おい何に気づいた」
『この世界でインターネットにアクセスできるのは私達だけです。つまりネット上に情報をアップできるのも私達だけ、ということです』
「そ、それじゃーー」
『振り出しですね』
「クソがああああ!!!!」
『ま、まあ落ち着いて下さい。とにかくこの森から出る方…ほう…を……』
「ん? どうした?」
もしかして壊れた?
『落ち着いて後ろを向いて下さい』
「は?」
何なんだいきなり。
「後ろが何だってんだ…よ…」
瞬間、俺は動けなくなった。
振り向いた先にいたのは見たこともない巨大な獣だった。
一見、熊の様に見えるがその額には鋭く長い角があり皮膚は灰色でまるで鎧の様に硬質化している。
「なあ…因みにお前、こいつ倒せる?」
『それ、聞く意味あります?』
「だよ、なっ!!」
そして、俺達は全力で逃げ出した。
が、当然獣の方が速く、あっという間に追いつかれた。
獣が俺達に飛びかかる。
くそっ!
悲惨な結末を想像して目を閉じる。
が、それがやってくることはなかった。
目を開けるとそこには大きな男の背中と地面を転がる獣の姿があった。
「大丈夫かー? 坊主」
巨大な斧を片手に男はそう言った。
読んで頂きありがとうございます。