表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/23

二十一話私、弱みを見つける

3日間投稿できずすみません

仕事に体力持っていかれました。

 

 朝食を食べ終えた私が食堂を出ようとすると何やら数人の神父達がヒソヒソと話していた。


「例の件、どうやら本当らしい…」

「例のとは地揺れの? では王都は…!」

「ああ…嘆かわしい」


 数週間前の地揺れ、確かに大きかったけど王都ではそんなに被害が出たのね…。

 私は心の中で王都の人達の無事を祈りながら食堂を出た。

 そういえばミルロウは話しかけてきた割にさっさと食事を食べると先に出ていってしまった。

 絡まれるよりは良いけどそれはそれでムカつく。

 理不尽な気もするが気を使うのも馬鹿らしいのでこれでいいのだ。

 と、彼のことを考えていたからだろうか。

 廊下を歩いているとロガード神父とミルロウが話しているのが見えた。


「父上。例のけんだが…」


 何だか今日は色んな人の話が聞こえてくるわね。

 しかも意味深な話ばっかり。


「大丈夫です。任せなさい」


「すまない。恩に着る」


 珍しく殊勝なミルロウの頭をロガード神父が軽くはたく。


「のおっ!?」


「子どもが親に変な気を使うものではありません」


 ロガード神父が優しく諭す様に言う。

 そして照れ臭そうにそっぽを向いたミルロウと目が合った。


「ミラ、か?」


 ミルロウが気まずそうに顔を歪める。

 それを見た私は口角が上がるのを感じた。


「趣味が悪いぞ…、ミラ」


 唇を尖らせるミルロウとは反対に私は胸がスッとするようだった。

 偶然だけど初めてあいつに一矢報いた気がするわ。


「ふふっ。ミルロウ、良い友達ができたようですね」


 ロガード神父が可笑しそうに笑う。

 それを見て私は慌ててひよを引き締めた。

 しかし、ロガード神父は特に気にした様子もなく「それでは」と言って去って行った。


「あんた、かわいいとこもあるんじゃないの」


「うるさい。それよりそろそろ訓練の時間だろう? 行くぞ」


 ミルロウはさっさと会話を切り上げると修練場へと向かって行った。

 普段は「訓練なんて」とゴネる癖にそれを言い訳にするなんて。

 さっきのことが余程気まずいのだろう。

 私は気分良くミルロウの後をついて行った。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 街外れの山の麓。

 鬱蒼と生い茂る大自然を前に私を含む教徒達は規則正しく整列している。

 そして、その場の全員が教官となる神父の話に唖然としていた。


「吾輩はモーガン・ドルテ。吾輩のモットーはズバリ『筋肉』だ!!」


 教徒達の前ではとても神父には見えない屈強な上裸の男が自身の筋肉を見せつけながら理解しがたい理論を展開していた。


「『健全な精神は健全な肉体に宿る』という言葉があるな! つまり健全な精神=健全な肉体! そう筋肉だ!! では筋肉をつけるにはどうすれば良いか? そう山籠りだ!! これから君達には1週間、サバイバルをしてもらう!!」


 そう言ってモーガン神父は「ふんっ!」と上腕の筋肉を見せつけようにポーズを決めた。

 昨日まで私達の訓練をしていた神父に急な仕事が入ったようで急遽モーガン神父が担当になったらしい。

 私は早くも厳しくても真っ当だった昨日までの教官が恋しくなっていた。


「聖都は余程人不足と見える。そこいらのボディビルダーを引っ張って来るとはな」


 隣りのミルロウがヒソヒソと話しかけてきた。


「ちょっと! 失礼でしょ!」


 声を潜めて言い返す。


「君だってうんざりしていたじゃないか」


「それはーー」


 私が言い淀んでいるとモーガン神父が一際大きな声を上げた。


「さあ! それでは各々武器、それから用意した荷物を持って山に入ってくれたまえ!!」


 そう言ってモーガン神父は普段修練で使っているのと同じ武器が収められた木箱を指した。

 教徒達が順番に各々の武器を選んでいく。

 私は自分の身長よりやや長い槍を選んだ。

 そして、食料に水、魔力補給用のポーション、ナイフなどが入った荷物袋を背負って入口へと向かう。

 入口に着くと列が出来ており、皆ニ十分程の間隔を開けて順番に山へと入っていった。

 そして私の番が来た。

 かろうじて前の人が通った跡のおかげで入口だけは道らしきものが出来ている。

 植物が生い茂る中で1箇所だけ出き上がった獣道はさながら巨大な生き物が大口を開けて獲物を待っているようだった。


「さあ! 出発だ!」


 モーガン神父の合図に不安を抱えながらも山道を歩き出す。

 登山とはまるで違う。

 道らしい道など存在しない。

 あるのはボコッと突き出た岩に周りをこれでもかと覆い尽くす木々や草花。

 五分も歩けば入口が見えなくなるほどに視界が悪い。


「とりあえず水場を探さないと…」


 食料も水も恐らく用意された分だけでは足りない。

 水場を見つければその両方を確保できる。

 恐らく魔物もいるだろうから暗くなる前には拠点を構えたいところ。

 するとガサッと遠くの茂みから音がした。

 ビクッと身体が固まる。

 そして、姿が見えないままその音は凄まじい勢いでこちらへと向かってくる。


「っ!」


 私は緊張に汗ばむ手で槍を構えた。

 音が目の前まで来たときソレが姿を現す。


「ミラっ!!」


「ミルロウ!?」


 ミルロウは茂みから勢い良く飛び出すととスタッと私の前に着地した。

読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ