十一話俺、友達ができた?
すみません。
寝坊です。
「お兄ちゃん! 早く遊ぼう!!」
家に着くなりリーラがガロの腕を引っ張った。
「っつーわけでちょっと行ってくるわ」
ガロはひらひらと手を振りながらリーラと裏庭に歩いて行った。
『どうしますか? 慎太郎』
「んー…。ルーカスさんの手伝いをしようか。タニアさんだと手伝いどころか邪魔になっちゃいそうだから」
『そうですか。ルーカスの場所は知っているのですか?』
「知らない」
『ではどうするのですか?』
「…タニアさんに聞く」
〜~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あの…ルーカスさんはーー」
「ひっ!?」←天井に張り付くタニアさん
無理だった。
〜~~~~~~~~~~~~~~~~~
仕方ない。
気が進まないけどガロとリーラに聞こう。
下手に近づくとまた巻き込まれそうで心配だがしょうがない。
裏庭が見えてきた。
一息ついたところなのか、リーラは息を切らして大の字になっていた。
ガロは涼しい顔で隣に座っていた。
「あーあ、掠りもしないやー」
「そりゃ、一発でも貰ったらアウトだからな」
「ねえ、何でお兄ちゃんは反撃しないの?」
「……。かわいい妹に手は出せないだろ」
「うそつき」
「うるせーよ」
…は、入りづらい。
ちょっと様子を見よう。
「お兄ちゃん。シンのことなんだけど…」
ーー心臓を掴まれた気がした。
やっぱり本当は俺と一緒にいるのは嫌だったのか?
当然だ。
こんな陰気な奴と一緒とか息が詰まるだろ?
ルーカスさんに殴られても良い。
やはり住まわせてもらうのは断ろーー
「あたし、嫌われてるのかな?」
え?
「シンね。会ってから一度もちゃんとあたしと話してくれないの。まるで怯えてるみたい…。あたし、何かしちゃったかな?」
その声は少し涙ぐんでいた。
「そんなことないさ」
「でもっ! お兄ちゃんやジリとは楽しそうに話してる!! だからっ! あたしがっ!!」
「リーラ」
ガロの優しい声がリーラの言葉を止めた。
「リーラはどうしたい?」
「あたしは、シンと仲良くなりたい。シンね、あたしと遊んでくれたの。他の子は皆、誘う前に逃げるんだ。でも、シンは遊んでくれたの」
「うん」
「だけどね。シン、すごく弱かったの。多分剣も持ったことないと思う」
「そうだな」
「だけど、あたしと遊んでくれたの。すごく優しい人…」
「うん」
「だから、そんな人を傷つけちゃったんじゃないかって!! もし、そうだとしたら! あたし…!」
リーラは泣いていた。
俺は何をやってたんだ?
もう後悔しないように頑張るんじゃなかったのか?
なのにここに来て俺は自分から動いたことがあったか?
いいや、ただ流されていただけだ。
なのに「一緒にいるのが嫌だったのか」だと?、「こんな陰気な奴といると息が詰まる」だと?
俺はきっと無意識にあいつを疑っていた。
その笑顔に、行動に、裏があるんじゃないかって。
優しい?
違う!
俺はただ自分が嫌われるのが怖かっただけだ。
ヒビって卑屈になっていただけのただの臆病者だ。
『貴方はそこで見ているだけですか? 貴方の後悔とはその程度だったのですか?』
わかってる。
一歩、踏み出す。
ジリが微笑んだ気がした。
「リ、リーラ!!」
リーラが振り返った。
「シンっ!?」
声が裏返る。
みっともなく目が泳ぐ。
知ったことか。
格好なんて気にするな。
考えるのは1つでいい。
「お、俺と!」
最初に決めた、たった1つ!
「友達になってくれ!!」
言った。
リーラの顔が見れない。
いや、見るんだ。
恐る恐る目を開ける。
そこには涙でぐちゃぐちゃの顔に笑みを浮かべたリーラがいた。
「うん! 喜んでっ!!」
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