最後の質問
よろしくお願いします。
そうこう話しているうちに学校まで来た僕らは、そのまま校門をくぐり、校内へ入る。うちの学校には守衛さんとかもいないので、特に呼び止められることもない。
まずは校庭をぐるっと見て回る。時々他の生徒とすれ違ったり、外で活動している部活をルオーネさんは珍しそうに見ていた。
その後、校舎内に入る。文化部が校舎内で活動しているため、出入り口の鍵は開いていた。
とりあえず、僕が普段使っている教室に案内した。ルオーネさんはここでもすごく珍しそうに教室や室内の備品を見ていた。
「そんなに珍しい?」
ルオーネさんに聞くと
「はい。私がいたところにはこういったものはなかったんです。一応知識としては知ってたんですが、実際にこの目で見ると感慨深くて」
とのこと。
でも、海外の映画とか見てる限りだと、学校で使う物は外国でも結構似てると思うんだけど……。これも聞かないほうがいいのかなあ。
「天童さん」
呼ばれてルオーネさんのほうを見ると、ルオーネさんはこちらを真っ直ぐに見つめていた。
「ここには純粋でありながら、欲望に満ちた匂いが充満しています。本当に天童さんには叶えたい欲望はないんですか?」
昨日から何度も聞かれた意味の分からない質問。ただ、彼女の真剣な目を見る限り、こちらも真摯に答える必要があると感じた。
「うん。ないよ」
そう答えるとルオーネさんは、そうですかと静かに言って笑った。
悲しそうな、残念そうな、けど嬉しく、安堵しているような、そんな笑顔だった。
「それじゃあ、駅に向かいましょうか」
そう言うと彼女は出入り口に向かって、歩き出した。
僕は慌てて彼女を追う。
ルオーネさんの雰囲気は何か憑き物が落ちたかのようだった。
学校を出て、駅に向かって来た道を戻る。
しばらく歩いていると、ルオーネさんの様子が変なことに気付いた。
辺りをきょろきょろと見回している。
つられて僕も辺りを見ると、違和感がある。昼間だというのに周りに誰一人いないのだ。ここは普段そこそこに人通りがある場所だ。おまけに土曜日。何かがおかしい気がする。