学校へ
よろしくお願いします。
話しているうちに駅の近くまで来たのだが、ルオーネさんが学校を見たいと言いだした。
学校なんて見ても面白くないと思うけど、自分が行く学校を見ておきたいということかな。
それにしても、今日が土曜でちょうどよかった。僕もこうやってルオーネさんに付き合ってあげられるし、うちの学校は週末でも部活動の関係で門が開いてるから、勝手に入っても特に何も言われない。
「いいけど、ちょっと距離あるよ」
今日はルオーネさんがいるし、駅なら家から徒歩でも十分これる距離だから歩きで来たけど、僕は普段通学には自転車を使っている。
「はい、私は大丈夫です。すみません、わがままを言って」
ルオーネさんが申し訳なさそうに答える。
「大丈夫だよ。ちょうどいい運動になるし。それじゃあ、先に学校行こうか」
学校に向かいながらあれこれ話をする。
「いつからうちの学校に来るの?」
なんとなく、ルオーネさんに話を振ると、
「えっと、ま、まだはっきり決まってなくて……」
と何とも歯切れの悪い返事が返ってきた。
そんなことってあるのかな?
そもそも何で独りなんだろう?
昨日はバタバタしていて聞きそびれてしまっていた。
「あの、ちょっと込み入った話になっちゃうのかもだけど、ルオーネさんは何で独りなの? その、家族の人とかは一緒じゃないの? あ、答えずらかったら別に言わなくていいんだけど」
人にはそれぞれ色々と事情があるだろうし、聞いてもいいのかなと思いながらも質問すると、ルオーネさんは明らかに動揺したように焦って返答してきた。
「あ、えーと、あの、その、さ、先に私だけ来たんです。家族は後から来る予定で」
嘘だろう。僕にも分かるほど、動揺した口調で目も若干泳いでいる。
気にはなるが、無理やり聞き出すわけにもいかない。
「あ、ごめんね。変なこと聞いて。分かった」
とりあえず、この話はここまでにしておこう。
何か別の話はないかな、と考えていると、今度はルオーネさんの方から質問してきた。
「天童さんは、ご両親と良子さんの4人家族なんですか?」
「うん、そうだよ。父さん、母さんは仕事の関係で家にいないことも多いけどね。普段は良子とほぼ二人暮らしみたいなもんかなあ」
「そうなんですね。学校ではどういったことをされてるんですか?」
「僕は普通科なんだ。部活は特にやってないから、授業が終わったら普通に帰えって来て、家でのんびりしてることが多いかなあ」
そんな風に答えながら、僕らは学校へ歩いて行った。