勇者の要求
さくっとした内容です。
暗い雲に覆われ日が差さない不毛の大陸。
その中央付近にある巨大で禍々しい外観を持つ城こそが魔王城だ。
魔の軍団の巣窟にして魔王自身が鎮座するその城に攻め入ったのはたった一人の勇者。
勇者は城を守る魔王軍の刺客を次々に倒していく。
人類を苦しめてきた魔王軍の四天王もなすすべなく勇者に敗れていった。
王の間にいる魔王に副官の敗北が伝えられる。
こうして遂に魔王と勇者は対峙することとなった。
「貴様が勇者か」
「…」
「まずはここまで来たことを褒めてやろう…我が屈強な魔王軍を倒し、ここまで来たのはお前が初めてだ」
「そうか…正直、ここまでの敵は大したやつはいなかったぞ…だがお前は違うようだ」
互いに無類の強さを誇る勇者と魔王は、相手が自分と並ぶ実力を持っていることが分かっていた。
「勇者よ、取引といかないか」
「どういうことだ?」
「もし、わしの味方になれば世界の半分を勇者にやろう」
その言葉を聞いて勇者は笑い出す。
「ふむ、やはりこんな話しには乗ってこぬか」
魔王が勧誘を諦め、勇者との戦いを選択したその時。
「分かった、それで手を打とう」
勇者から思いがけず、了承する回答があった。
「ほう、わしの味方になるというのだな」
「ああ、ただし俺とお前は対等の関係だ、だから世界の半分をもらう」
「ふふふ、よかろう、ではお前は世界の北半分をわしは南半分を…」
「いや、待て、それは半分なのか?」
「どういうことだ?」
「北と南で分けることで半分になるのか?面積は?そこにある国の数は?人口は?、ちょうど半分になっているんだろうな」
「う、うむ…その半分というのは言葉の綾と言うか、大体半分くらいという意味で…」
「いや、半分だ、絶対に半分もらうぞ、ただし不公平がないように魔王にどう半分にするかは決めさせてやる、土地の大きさ、国の数、住んでいる人の数、動物の数…すべてが半分になるように綺麗に分けてくれ」
「い、いや、ちょっと待て、そんなこと不可能…」
「おいおい、魔王ともあろうものが自分で口にしたことを違えるのか?、魔王が言ったんだぞ、半分やるって」
「確かに言ったが、ちょうど半分って意味じゃなくてだな」
「いーや、半分だ、きっちり半分に分けて状態で貰うからな、それができるまで俺は国に戻ってるから半分の案ができたら持ってきてくれ」
こうして魔王は世界を半分に分ける方法を考えることになる。
だが、世界のすべてを半分に分ける方法など在りはしない。
なぜなら人が一人移動しただけ、新しい命が産まれるだけ、もっと言えば食物連鎖が起きるだけでそれまで考えていた世界を半分にする案は考え直しになる。
時折、自分は何をやっているのかと思いつつも、魔王はそのプライドから自分で言ったことを守るために世界を半分に分ける方法を考え続けた。
勇者は国に戻り、魔王軍が壊滅し、魔王がもう無害であることを王に伝える。
そして、世界に平和が戻った。




