物語の始まり リグレット
面白い事など、何もなかった。
楽しいことなど、見つからなかった。
この身は、ただ巫女として、使命を果たす為の身だった。
私の両親は大罪人だったらしい。
しかし、天使の元へ連れていかれる前に子供を出産した。
その時子供を拾った者達は、その子供を利用する事に決めたらしい。
子供に罪はあるのか?
肯定。
――生の全てで償え。
そう言い聞かされて、育ってきた。
けれど私には、遠くの出来事を知る力があった。
真実を知るのは、それからすぐだ。
しかし、それは私を苦しめるだけだった。
おそらく、たとえその境遇から逃げ出しても、当てのない私を助けてくれる者などいないからだ。
私は、私の命を諦めるようになった。
けれど、ある日天使の声が聞こえてきた。
それがほんの少しだけ、私の心に力を与えたのだ。
異世界で死に瀕した魂を、同じく心を殺していた私の体に入れる。
それは、この世界を我が物顔で荒らしている存在……悪魔を殺すための方法の一つだったらしい。
そうして、五葉という少女の魂が、が私の体に宿った。
私は彼女の明るさに救われていた。
だから、できるなら、彼女には幸せになってほしい。
すべてが終わった時、世界のバランスをとるために、一つの魂が元の世界へ行かなければならない。
なら、その時は私が犠牲になろうと思った……。
この太陽のような存在を守るために。
この絶望を照らしてくれる希望を守るために。
そのために死ねるのなら、生の終わりだってきっと、怖くはない。