学生たちの戯れ
悠花が帰宅してから、数日が経つ
優月はいつものようにクール・ビューティーな風で周りに接する。
頭がいいから、クラスの生徒に勉強を教えたり
運動が出来るから部活の助っ人をやったり
忙しい毎日を送っていた。
「木田さん~!数学教えて~」
「私も~」
「……いいよ、何処がわからないの?」
いつものように接する姿を見ていた
優月の友達たちは口を揃えて「雰囲気が変わった」と遠目から話していた。
「優月、何があったんだろ」
「やっぱり彼氏出来たとかそういうやつじゃない?」
「年上かなぁ…同い年?」
「後で聞いてみようか!」
クール・ビューティーなのは変わらないものの
何処か雰囲気が柔らかく優しくなったようで
更に男女共に人気になっていった。
「…か、彼氏!?!」
ただ一人、鈴木 清司という男子生徒を除いては、
彼は学校入学初日、桜の木の下で風に揺られていた優月を見ては一目惚れした生徒のうちの一人。
「清司!まだ木田のこと諦めてなかったのか……お前には高嶺の花だよ。」
「うるせぇ、わかってんだよ。そんなこと…ただ、男ならそういうの伝えてなんぼだろ!」
「お前らしいなぁ、フラれても不登校にだけはならんでくれよ。じゃトイレ行ってくるわ。」
廊下で話していた清司は、ふと晴れ晴れした空を眺めていた。
暑すぎる気温のなか、この天気はズルい。
すぅーと深呼吸すると夏のにおいがした。
「…なに、してるの?」
「何って…においを、ってうわぁ!?!」
清司の背後に、気づいたら優月が居て
声をかけられた。
流石に音もなく近づかれたから、驚いた。
「…におい?なんの?」
「季節のにおいとかわかんね?」
「セミのにおいなら、清司くんって文化祭実行委員会だよね。出し物決めるのいつ?」
「明日。でも事前にアンケートしたらメイド喫茶がダントツだったよ。お化け屋敷も多かったけど」
「そう……ありがとう」
すぐさま、携帯を取り出しては
悠花へチャットを送っていた。
『喫茶店になるかも』
そう送ると秒で返信が来て
『メイドかな!?!!絶対行く!』
記載されていた。
「なぁ、木田って……、」
清司は、初めて優月の恋をしている女の子の顔を見たのだった。
少し胸がチクりとした。
優月は清司がいることを思い出して反応を返した。
「……何?」
その顔はいつもの優月だった。
「うんん、なんでもない。そろそろ授業だし、戻るぞ」
「そうだね。行こうか。」