思い出
「「ただいま~」」
出掛けから帰宅し、二人は玄関で
声をあげ洗面所へ向かった。
手を洗い、うがいをすると
廊下から姉の声がして
「どこ行ったの?」や「どうだった?」と
興味津々に聞いてくる
そこは昔から変わらないものだ。
「私トイレ行ってくる」
こういう時は逃げるに限る
いつものように理由を付けて時間を稼ぐ
廊下では、代わりに優月ちゃんが
話をしていた。
「…凄く楽しかったよ。写真みる?」
「優月ちゃんがそんな嬉しそうな顔をするなんて……写真見たい!」
スマホに納めた画像を見ては
感想を述べて行く姉だった。
「お母さん…あの、写真現像したいんだけど、やり方教えて…」
「わかったわ。明日現像しに行きましょうか」
「うん…」
優月の顔は少しずつ、表情が薄くなり
周囲から良く言われる愛想がない顔に変わる
(両親にもそういう風になるのか…)と遠目から見ていた。
「…あのね。お母さん。」
「お願いあるんだけど、アルバムを2個可愛いやつ買ってきてほしいんだ。写真は悠花さんとふたりで印刷したいの。」
「わかったわ!可愛いやつ探してみるわね」
「!ありがとう…お母さん。」
*****
次の日になり、写真をたくさん印刷して
家に買えると、姉がアルバム2個持って来た
グラデーションがかかったピンクと水色だった。
「どっちの色がいい?」
優月の顔を伺うとピンクも気になっていたけど、姉が水色を渡していた。
少し困ったような表情を浮かべていた。
「ん~~…あ、そうだ。優月ちゃん。それ貸して」
「?…はい、」
自分は、ここへ来る前に100均で
きらきらして可愛いオーロラ折紙を買っていたことを思いだし、優月の持ってたアルバム表紙の内側にオーロラ折紙を貼って行き
色を少しずつ変えて行き
好みに変え、完成したものを渡した。
「世界に一つだけのアルバムだね~」
「……私だけの、ありがとう、悠花さん。」
「いいえ~」
「あ、あの……悠花さんの分も私が作りたいんだけど、だめかな」
「わたしこういうの向いてないから、好きにやってもらって…若いうちにたくさんいろんな面で経験するのもいいからね~」
「悠花が楽したいだけでしょ!」
「バレたか~ははっ、」
苦手なのは事実で、面倒なのも事実だ、
完成したら郵送で送ってもらえるらしい。
生きる理由が増えた。
それから、時間は経ち
またしばらくのお別れになる
駅内へ見送り来てくれた優月ちゃんは少し泣きそうな顔をしていた。
「また、来るからさ。アルバム楽しみにしてるね~」
「ゆ、悠花さん!あの…今度来る私が通ってる学校の文化祭があるんですが、予定合わせること難しいですか…?」
「上の人と交渉進めてみるわ。出し物決まったら教えて~じゃ、また来るね。」
「はい。お元気で…!」